楽天・早川、快投デビューでプロ1勝!球団新人最速開幕3戦目 全ての始まりは高校時代の“練習台”

[ 2021年3月29日 05:30 ]

パ・リーグ   楽天5ー0日本ハム ( 2021年3月28日    楽天生命 )

<楽・日>4回2死満塁、樋口を打ち取りガッツポーズする早川(撮影・白鳥 佳樹)
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 黄金ルーキーが、期待通りの快投でデビューした。楽天のドラフト1位・早川隆久投手(22)は28日、日本ハム戦で6回を4安打無失点。雨に見舞われた悪条件下で毎回の8三振を奪った。開幕3戦目での白星は球団の新人では最速で、今年の12球団のルーキーでも一番乗り。4球団が競合し、将来の大エースとして見込まれる左腕が、確かな一歩をしるした。

 午後1時ちょうど。注目のプロ第1球は144キロの低め直球で見逃しストライクを取った。初めて上がった本拠地のマウンドで、大きな拍手を全身で受け止めた。「ファンの方の拍手が届いて、これなら頑張れると思った」。こみ上げてきた力をボールに込めた。

 3回まで無安打。4回に無死満塁のピンチを招いた。野村と大田は空振り三振で樋口は三ゴロ。無失点で切り抜けると、拳を突き出し声を上げた。降りしきる雨の中、6回1死満塁のピンチもしのぎ、6回4安打8奪三振。石井監督は「ピンチで本領が発揮される。素晴らしい投球だった」と絶賛した。

 始まりは「練習台」だった。中学時代は主に一塁手で、野手として木更津総合に入学した。転機は2年夏。最後の夏の大会に挑む3年生の「サウスポー対策」として、左利きの早川が練習で打撃投手を務めた。同校の五島卓道監督は当時を鮮明に覚えている。

 「3年生の主力が誰もバットに当てられないんですよ。私もまだ早川を投手として見ていなかったので、何でだろうと思いました」

 新チームになった8月の東海地方遠征。市岐阜商戦で早川は右翼を守った。その試合に登板した投手が炎上。投手転向を希望していたため、試合後に思い切って本音を吐き出した。「自分が投げた方が抑えられると思います」。五島監督にはもちろん激怒された。「そこまで言うなら、どれだけ投げられるのか見てみよう」と、すぐに岐阜城北のBチームと試合が組まれた。

 わがままを言った「バッピ」は、4球団競合の「ドラ1」にまで成長した。あの夏、自らの意思を伝えていなければ「投手・早川」は誕生していなかっただろう。自分の性格を「自己中」「マイペース」と表現する。信じるものがあれば、臆せずに行動に移す。2月の沖縄キャンプでも田中将や岸、涌井らに貪欲に助言を求め、プロ初勝利へとつなげた。

 最高の形で一歩目を踏み出し「この一勝は新しいキャリアの始まり。今後も長くキャリアを積み重ねていきたい」と表情を引き締めた。石井監督は「エースとして育てていく義務がある」と改め て約束。夢は大きい。「エース、スーパーピッチャーになりたい」。特別な一勝だが、まだ序章でしかない。(重光 晋太郎)

 ≪初登板初勝利は球団6人目≫早川(楽)がデビュー戦で今季の新人一番乗りとなる初勝利を挙げた。楽天で新人の初登板初勝利は、15年安楽以来6人目。12球団新人勝利一番乗りは、17年高梨(現巨人)以 来チーム2人目となった。また、この日は開幕3連戦の3戦目。楽天の新人では13年則本昂(開幕3カード目)と前記高梨(開幕2カード目)の開幕6試合目を抜く最速勝利で、開幕カードで勝ったのは早川が初めてだ。

 ≪母・優子さん感涙≫早川の両親と2人の姉が千葉県の実家から応援に駆けつけ、晴れ姿を現地で見届けた。左腕はヒーローインタビューで「ウイニングボールは家族に渡したい。支えてくれた家族がいたからこそ、この日がある」と感謝を伝えた。前夜に「思いっきりやっておいで。楽しい野球ができるといいね!」とメールで激励した母・優子さん(53)は「家族という表現をしてくれた息子の優しさがうれしかった」と涙。この日は19年12月28日に他界した祖母・春子さんの月命日だった。早川家に新たな記念日ができた。

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