医療従事者を経験したメジャー予備軍 強くした野球への思い

[ 2021年3月25日 13:33 ]

ウィル・スチュワート(AP)
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 あす26日、今年のプロ野球が開幕する。高校野球は2年ぶりに開催されたセンバツの待っただ中だ。コロナ下でも例年通りの野球のシーズンを迎えつつあるのは、米国でも同じ。大リーグは4月1日(日本時間2日)、マイナーリーグは5月の開幕に向けて、選手たちは調整を進めている。

 昨季はマイナーの全日程が中止。そのオフシーズンに、人生観が変わる経験をしたのはマーリンズ傘下の有望株ウィル・スチュワート投手(23)だ。ルーキーリーグから1Aへと19年まで着々とステップを踏んできた左腕は昨年、時給10ドル(約1090円)で病院で働いた。新型コロナウイルスに感染した患者の治療や看護をサポート。壮絶な医療現場を目の当たりにした。

 「25歳、26歳、28歳の人たちがコロナに感染し、死を目前にしていた。呼吸ができなかったり動けなくなったりしている人たちを見て、とても怖かったし、早くグラウンドに戻りたいとずっと思っていた」

 スチュワートが6カ月間働いたのは、故郷アラバマ州ハンツビルの病院。医療に関する専門知識や勤務経験はなかったが、生活費が必要だったため、ガールフレンドの紹介で始めたという。

 「自分と同じくらいの年齢の人たちが、本当に苦しんでいた。今の人生に、これまでの10倍以上、感謝するようになった」

 19年2月、球宴選出2度の強打の捕手リアルミュートがマーリンズからフィリーズにトレード移籍した際、交換要員となった3人のうちの1人だったのがスチュワート。今年はメジャーキャンプの紅白戦で登板するなど、その将来性に球団から寄せられる期待は大きい。野球ができる喜びと感謝の思いを、マウンドで表現する。(記者コラム・大林 幹雄)

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2021年3月25日のニュース