「10・19」近鉄戦士の新天地は台湾プロ野球 佐藤純一審判員60歳の挑戦

[ 2021年3月17日 11:00 ]

台湾プロ野球で審判員の指導員を務める佐藤純一氏
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 台湾プロ野球(CPBL)が13日に開幕した。近鉄で外野手としてプレーし、引退後はNPB審判として2148試合に出場した佐藤純一氏(60)は今年から台湾プロ野球で審判員の指導員を務める。

 元NPB審判員の記者にとって、佐藤氏はかつての上司だ。数日前に電話取材。約束の午後8時に電話すると「おう柳内。ずいぶん早いな」。しまった…。台湾と日本に1時間の時差があることを忘れていた。それでも佐藤氏は怒ることなく、審判員らしい通る声で近況を語ってくれた。

 富邦と中信の開幕2戦目は台中球場で14日に開催された。佐藤氏は指導のためにグラウンドの審判員に目を光らせる。4回だった。投手のセットポジションが制止していないと感じた。“自分ならボークを宣告する”そう思った直後に二塁塁審の楊審判がボークを宣告した。試合後の反省会で「ナイスコール」と声をかけると、楊審判はうれしそうにうなずいた。言語も文化も異なるが「野球もルールブックも一緒。やることは変わらない」と強く感じた。

 佐藤氏は82年ドラフト3位で近鉄に入団。88年には「10・19」として語り継がれるロッテとのダブルヘッダーにも出場した。90年に選手を引退した際、当時の仰木彬監督から「審判やらんか?」と言われたことがきっかけで転身。日本シリーズ6度、オールスターも4度も任される名審判となり、球界を支え続けた。60歳を迎えた昨年限りで引退。だが、引退直後に台湾球界から指導員としてのオファーがあり「隠居は自分の性分に合わない」と挑戦を決めた。

 2月4日に台湾へ渡り、コロナ下のため計3週間の隔離を経て、審判クルーに合流。球場で審判員に技術向上のためのアドバイスを送るなど、充実した日々を過ごしている。1軍の舞台を目指して奮闘する若手審判の姿に刺激を受け「自分も昨年まで現役で色々なことに苦しんだ。寄り添っていきたい」と言う。選手、審判として得た豊富な経験を、異国の地で伝えている。(記者コラム 柳内 遼平)

 ◆佐藤 純一(さとう・じゅんいち)1960年7月18日生まれの60歳。大曲高を卒業後、社会人野球の秋田相互銀行でプレー。近鉄では通算290試合出場で35安打、4本塁打、11打点、20盗塁。

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