楽天・岸 東北への思い胸に5回1失点 震災から10年…故郷・仙台を「ずっと思っている」

[ 2021年3月10日 05:30 ]

オープン戦   楽天3-2ロッテ ( 2021年3月9日    静岡 )

<楽・ロ>5回1失点の好投を見せた岸(撮影・白鳥 佳樹)
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 楽天は9日、ロッテとのオープン戦に快勝。先発した岸孝之投手(36)は5回2安打1失点と好投した。宮城県出身で17年に西武からフリーエージェント(FA)で移籍もチームは昨季まで4年連続でV逸。自身もここ数年は故障に苦しんでいる。あす11日で東日本大震災から10年。田中将大投手(32)らと12球団屈指のローテーションを組む右腕は、東北への熱い思いを胸に頂点を狙う。

 変わらない表情。岸はいつも通り、淡々とミッションをこなした。今季2度目の実戦登板。先発で4回まで無安打投球を続けるなど66球で5回を2安打1失点にまとめた。「結果も内容もそこそこ良かった。右も左打者にも全部の球種を投げられた」。試合後もクールな表情で振り返った。

 最速142キロの直球は伸び、カーブやチェンジアップを織り交ぜる巧みな投球術も光った。シーズン初登板は開幕2カード目の初戦となる30日の同戦が決定的。ただ、予行演習という位置づけはしておらず「今日の投球が全てじゃない」と表情を引き締める。

 11日は東日本大震災から10年の節目。「(11日が)近づくから特別、思うことはない。ずっと思っているので」。宮城県仙台市生まれで東北学院大まで地元で過ごした生粋の“仙台っ子”。いつも胸には故郷への愛がある。前回優勝した13年当時は西武に在籍。同年9月26日には西武ドームで相手としてリーグ優勝の瞬間を見届けた。「東北の皆さんが凄く喜んでいた。優勝でこんなに喜んでくれる人がいるんだなと思った」。目の前で胴上げを見る悔しさと同時に優勝が人々に与えるパワーを実感した。

 16年オフ、FA権を行使して地元球団への移籍を決めた。思いは一つ。故郷への恩返し。「野球を始めたのは仙台。成長した姿を見せたい。僕には野球しかない。優勝だったり、勝つことで東北を盛り上げたい」。そう言ってクリムゾンレッドのユニホームに袖を通した。当時掲げた、チームのリーグ優勝&2桁勝利という目標はまだ達成できていない。

 岸は言う。「こんな成績では天国の星野さんに怒られてしまう…」。元監督で球団副会長として移籍に尽力してくれた星野仙一氏は約1年後の18年1月に死去。自分のことを「東北の星」と言ってくれた。交渉の席で言われた「東北を元気にしよう」、「もう一度、奇跡(優勝)の扉を開いてほしい」という熱いラブコールは今も耳に残る。だからこそ、このまま終われない。

 今年12月で37歳。気づけば投手陣で最年長だ。1年目だった07年に新人王を争った田中将が復帰し、涌井や則本昂らと強力先発陣を形成する。「僕の力だけじゃなく、みんなで喜んでいただけるように頑張りたい」と岸。忌まわしき震災から10年。今季に懸ける思いは、誰よりも強い。(重光 晋太郎)

 ▽13年の楽天の初優勝 マジック2で迎えた9月26日、敵地での西武戦。1点リードの9回は先発で無敗の連勝記録を続けていた田中将が救援登板。このイニング開始直前に2位のロッテが敗れ、勝てば優勝という条件に。1死二、三塁と一打サヨナラのピンチを招くも栗山を3球連続直球で見逃し三振。続く浅村も5球連続直球で最後は153キロで空振り三振。全て直球の「田中の8球」で球団創設9年目で初のリーグ優勝。星野監督が宙を舞い、ナインはファンと喜びを分かち合った。

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