【畑野理之の理論】北川コーチ 今は佐藤輝の健康チェック中

[ 2021年2月14日 08:00 ]

木浪(左)を指導する北川コーチ(撮影・大森 寛明)
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 宜野座で大注目されているドラフト1位の佐藤輝だが、その怪物くんに全然、注目しないコーチがいる。北川博敏打撃コーチだ。いや、言葉をまちがえたかな。これでは誤解を生んでしまう。少なくともグラウンドで見える範囲では、今はしっかりと見るときで、あえて技術指導はしていないようにみえる。

 打撃練習でも、ケージの後ろから視線を送るだけで、呼び出して個人レッスンをするわけではない。佐藤輝が隣のケージに移動すれば、次に来た選手に目をむける。後ろでティー打撃をしているときは背中を向けたままだ。“教えないぞ”という意思を感じる。

 やっぱり、まだ誤解を生みそうなので再度強調するが、仕事放棄だとか、指導能力を疑問視したいと言いたいわけではない。この「まずは見る」が北川コーチのスタイルなのだろう。特に新人や移籍組、新外国人など1年目の選手には知ることから始めているようだ。

 17年から3年間ヤクルトの2軍打撃コーチを務め、20年に矢野監督に請われて阪神に入団するも1年目は2軍に配置された。今年から昇格。1軍はオリックスの打撃コーチだった16年以来5年ぶりなので“佐藤輝は俺が育てるんや”と張り切っているはず…というのは邪推でした。

 例えるなら、いまは人間ドックで精密検査をして血圧や脈拍などの健康チェック中という感じ。今後、治療が必要となったときのために正常値を記録しているのだろう。何もわからない段階で手術をして、長所にまでメスを入れてしまうことのないように、だ。

 昨年ファームでも、ドラフト2位新人だった井上広大にしばらくは手をつけなかった。2年目の今年は1軍キャンプに呼ばれるなど順調と言える。ヤクルト2軍打撃コーチ時代の18年にドラフト1位で入ってきた村上宗隆を大砲に育て上げたのは有名な話だ。

 佐藤輝もいまは結果が出ているが、いずれ壁にぶち当たる時が必ずくる。評論家陣の間では速球への対応は未知数、後ろ重心なので内角が課題なのではないかとよく耳にする。弱点を調べ上げ、徹底的に突いてくるのがプロの配球。いずれ苦しむときがくる。本人が助けを求めてくるときがくる。そこで、いい時と比べてどこがどう違うか指摘して納得させるために、今はじっと見ているような気がする。 (専門委員)

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2021年2月14日のニュース