セとパに格差はあるのか 両リーグ経験した元選手に聞いた

[ 2020年12月21日 09:00 ]

<日本シリーズ>表彰されるソフトバンクナインを見つめる原監督ら巨人ナイン(撮影・白鳥 佳樹)
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 ソフトバンクが2年連続で4連勝と巨人を圧倒した今年の日本シリーズ。近年の同シリーズや交流戦でパ・リーグが優勢な状況もあり、直後からリーグの「格差」にスポットを当てるテレビ番組やネット記事が多く見られるようになった。「セもDH制の導入を」や「ドラフト戦略を見直せ」という声も上がっている。

 実際に差はあるのか?両リーグでのプレー経験があり、数年前に現役を引退したA氏に話を聞いた。「格差はあるか?」の問いに「格差ではない」と即答。そして「そもそも両リーグで野球が違う。特に違いを生んでいるのがDH制。自然とパはデータに頼り過ぎない短期決戦向きの野球になっている」と説明した。

 DH制を採用しているパと採用していないセではドラフト指名選手の優先順位から違いが出る。A氏は「例えば打力や守備力など選手の能力を表す五角形があるとすれば、セはバランスを重視するけど、パは多少、その形がいびつでも一芸に秀でた選手を優先する」と言う。今秋ドラフトでも西武が体重112キロの長距離砲の渡部(桐蔭横浜大)を1位で獲得。あるセの球団のスカウトは「まさか1位とは…」と目を丸くしていたという。

 超一流の可能性を秘めて入団するパの野手はDH制で出場機会も増え、ソフトバンクの柳田、西武の山川ら初球から空振りを恐れずフルスイングする長距離砲が育つ。自然とオリックスの山本、西武の平良ら剛速球でねじ伏せようとする投手が育つ土壌にもなる。その野球はA氏によれば「短期決戦向き」。実際、日本シリーズやデータの蓄積量が少ない交流戦で近年はパが優勢だ。対照的にセは投手に球数を投げさせて交代に追い込むため、ミートポイントを身体に近付けて粘る「2ストライクアプローチ」を積極的に行うチームが多い。打者には器用さが求められる。当然、ある程度の守備力も必要でバランス型の選手が多くなる。

 A氏は「仮に短期ではなく143試合で12球団で優勝を争ったら、セとパの球団の差は、そこまで出ないと思う」と持論を語るが「このままなら交流戦や日本シリーズでのパの優勢は続くでしょう。セのファンは辛いですね」と声を落とす。現在、巨人がコロナ下での「投手の負担減」や「チーム強化」の理由で積極的にセのDH制導入を提唱しているのも「何とかしたい」という気持ちの表れだろう。少なくとも記者は「どうせ○○が勝つんだろうな…」という頂上決戦は見たくない。(記者コラム・山田 忠範)

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2020年12月21日のニュース