【藤川球児物語(25)】火の玉真骨頂日本新38試合連続無失点

[ 2020年12月7日 10:00 ]

06年7月11日、47回2/3連続無失点の球団記録を更新した藤川(右)
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 いつかはパンクするのでは…。そんな周囲の声も藤川球児には無関係だった。05年にシーズン80試合登板でリーグ優勝に貢献しても、06年はさらに「火の玉」に磨きをかけた。

 
 グラブに「細心而剛胆」(さいしんにしてごうたん)と刺しゅうを入れて臨んだシーズン。言葉通りに繊細で、大胆な投球を展開した。4月15日の広島戦(甲子園)で2点リードの8回から登板し、石原慶幸、代打・栗原健太をいずれも空振り三振。藤川ホールド、久保田智之がセーブを記録した試合が、記録ラッシュの始まりとなった。
 
 4月21日の巨人戦(東京ドーム)で2回4奪三振、翌22日の同戦でも打者5人から2奪三振。ギアは上がった。監督・岡田彰布も「去年より速くなっとる。フォームも完全に自分のものにしている。相手も真っすぐ狙いで当たらんのやから」とうなるしかなかった。
 
 交流戦でパ・リーグの猛者たちが攻略に目の色を変えても、球威は凄みを増すだけだった。5月16日の日本ハム戦(倉敷)では2回4奪三振、圧巻は同28日の西武戦(インボイス)だった。8回から登板し、先頭打者に安打を許したが、カブレラ、和田一浩、リーファーを3者連続空振り三振。9回も中村剛也、田原晃司、GG佐藤を3者連続空振り三振。最速は147キロでもバットにかすりもしない。これが真骨頂だった。
 
 開幕からウィリアムスが故障で離脱。6月には久保田も右手骨折で、抑えが不在となった。それでも藤川はフル回転で投げ続けた。勝てないときもあった。それでも若手を集め「今は我慢や。結果がすべて。結果を出していくしかない。悩んでも考えても明日は来るんだ」と連覇に向け、ハッパをかける姿があった。
 
 7月11日の広島戦(甲子園)まで日本新の38試合連続無失点を記録。47回2/3連続無失点は小山正明を抜く球団新記録。歴代でも金田正一(国鉄)、藤本英雄(巨人)、杉浦忠(南海)、別所毅彦(巨人)に続く記録。名だたる名投手の中に加わった。 =敬称略=

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2020年12月7日のニュース