【落合博満氏、特別評論】日本シリーズ第1戦 巨人・菅野を襲った4連敗の呪縛

[ 2020年11月22日 05:31 ]

SMBC日本シリーズ2020第1戦   ソフトバンク5―1巨人 ( 2020年11月21日    京セラD )

<巨・ソ>6回、栗原(左)に2点適時二塁打を打たれた菅野(撮影・尾崎 有希)
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 現役時代はプロ野球史上唯一となる3度の3冠王に輝き、監督としても中日を4度リーグ優勝に導いた落合博満氏(66)が、日本シリーズ第1戦を鋭く分析した。ソフトバンクが快勝した一戦で、巨人・菅野の投球に着目。昨年のシリーズ4連敗という呪縛が、第1戦のマウンドで力みにつながったと指摘した。

 お互いにエースを立てて勝ちにきたこの第1戦。ただ、両エースとも状態はそれほど良くなかった。それでも7回無失点の千賀に対し、菅野は6回4失点で降板。その差は、ソフトバンクに4連敗した昨年のシリーズから続く「呪縛」にあったんじゃないかな。

 全般的に菅野はボールが高かった。スピードは出ていてもコントロールがいまイチ。その高めの球を山本貴則球審がストライクに取ってくれた。この高さがボールと判定されていたら、おそらくもっと低めを意識して投げるよう修正していただろう。菅野はそれだけの修正能力を持っている投手だ。でも、高めがストライクになる。だから修正しないまま投げてしまった。

 この日の菅野はどこか力んで投げているように見えた。力を入れすぎるからスピードは出ても切れを欠き、力んだ分だけスライダーも速くなって曲がりきらない。右打者にはストライクからボールになるから空振りが取れたが、左打者の内角へのスライダーはほとんど曲がらない。左打者へいい曲がりだったのは6回に柳田へ死球になった1球くらい。その曲がりきらないスライダーを、2回に栗原に2ランされた。

 この試合、菅野はその栗原一人にやられたようなものだ。球種とコースは違うが、2回の一発を含め打たれた3本全てが同じ高さだった。ちょうど栗原のバットが出てくる高さで、力む分だけ合ってしまった。栗原が菅野に対してスイングしたのは3球。それが全てヒットになった。

 開幕13連勝したシーズンの投球なら、この高さでも打ち取れただろう。ただ、いつもの力がうまく抜けた投球ではなかった。ホームとはいえ、慣れない京セラドームのマウンドということもある。それ以上に、昨年のシリーズ4連敗から迎えた第1戦。絶対に負けられない重圧もあっただろう。シーズン最終戦から中6日。万全の調整だったはずだが、昨年からの「呪縛」を断ち切らないとという思いが力みにつながったんじゃないかな。

 対する千賀も状態は良くなかった。7回までよく持ったな、という投球。直球のスピードがあっても制球がばらついていた。それでも、直球の速さとフォークの落差という先入観が巨人の各打者にあったから、無失点に抑えることができた。

 巨人は菅野で落とした初戦が尾を引くかどうか。でも、まだ一概にソフトバンク有利とは言えない。第2戦以降、巨人投手陣がどれだけソフトバンク打線を抑えられるか。まずは第2戦が大きな比重を占めるだろう。(元中日監督)

 ◆落合 博満(おちあい・ひろみつ)1953年(昭28)12月9日生まれ、秋田県出身の66歳。秋田工から東洋大を中退し、東芝府中を経て78年ドラフト3位でロッテ入団。82、85、86年に3冠王。87年に中日、93年オフにFAで巨人移籍。97年から日本ハムでプレーし98年に現役引退。通算2236試合で2371安打、打率.311、510本塁打、1564打点。04年から8年間中日監督を務めリーグ優勝4度、日本一1度。11年に野球殿堂入り。13年オフから17年1月まで中日のGMを務めた。

 ≪04年就任即優勝 07年伝説の完全継投で日本一≫落合博満監督は04年に就任1年目でリーグVを果たし監督として初のシリーズ出場。西武に3勝2敗と王手をかけたが、第6、7戦を落とし涙をのんだ。
 06年には2度目のVもシリーズは日本ハムに1勝4敗と完敗。翌07年はセ2位(優勝巨人)ながら、新導入のCSを無傷の5連勝で勝ち抜きシリーズに進んだ。前年と同じ日本ハムに初戦黒星も第2戦からは3連勝で王手をかけると第5戦では先発の山井が8回まで完全投球。誰もが大記録達成を期待し山井コールが起こる中、落合監督は9回から守護神の岩瀬を投入した。
 「正直続投させたかった。マメをつぶしてなければ迷うところだったが、代える分には抵抗はなかった」という驚きのオレ流采配で史上初の継投完全試合を達成。53年ぶりの日本一へと導いた。10、11年のシリーズではロッテ、ソフトバンクに敗れ監督を退任した。

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