【内田雅也の追球】阪神オーナーも「勝負の年」 矢野監督とともに3年目に向かう藤原オーナー

[ 2020年11月13日 08:00 ]

<阪神・星野仙一監督入団発表>監督就任を受諾した星野氏(中)とガッチリ握手する久万オーナー(左)と野崎球団社長
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 星野仙一が初めて面会した阪神オーナー(電鉄本社会長)の久万俊二郎を責め立てたのは有名な話である。中日監督を退く2001年10月のことだ。2003年の優勝直後に星野が出した著書『夢 命を懸けたV達成への647日』(角川書店)に詳しい。

 久万がオーナー就任初年度の1985(昭和60)年以来、長く優勝から遠ざかっている現状に、星野は「その低迷の責任はオーナー、失礼ですがすべてあなたの責任ですよ」と言い放った。

 「タイガースの人作り、組織作りをオーナーは本当に真剣にやってこられたんですか。球団社長以下の人事からカネから、すべてを握っておられる、これはオーナーの責任ですわ。野球を知っている、知らないでいるの問題ではありません」

 相当な直言だが、久万はしばらく黙った後「あんたの言う通りやなあ」と認めたそうだ。

 後に当時監督の野村克也が夫人の脱税事件から辞任し、星野に監督要請・就任にいたった。

 03年の優勝は85年以来18年ぶりだった。今もまた、05年以降15年間も優勝から遠ざかっている。

 この責任は誰にあるのだろうか。この間、オーナーは手塚昌利、宮崎恒彰、坂井信也、そして今の藤原崇起と代わった。藤原の就任は2018年12月。矢野燿大の監督就任と重なっている。

 12日は矢野が大阪・野田の電鉄本社を訪れ、藤原にシーズン終了報告を行った。星野の教え子と言える矢野だが、星野のようにオーナーに直言するようなことはなかったろう。続投が正式に決まり、来季は3年契約の3年目。勝負の年となる。

 不成績の責任を監督にばかり押しつけてはいられない。藤原にとっても勝負の年なのだ。

 球団に通じた阪神関係者が「オーナーになって初めて分かることがある」と話していた。「財界など各界の人びとと交流の場で必ず“タイガースは……”といった話題になる。いかに世間から注目されているかが分かる。そして“勝ちたい”と心底思うようになる」

 藤原も「勝ちたい」と願っているはずだ。ただし「勝ちたい」だけで勝てる世界ではない。

 星野が言ったように人事にカネ……と球団経営の責任を遂行したい。

 選手に新型コロナウイルスの感染者を出した一連の問題で、球団社長・揚塩健治は引責辞任に至った。今月末日で退任する。

 後任の球団社長は藤原自らが兼務する。揚塩退任が決まった時、すでに内々定していた。近く正式に発表される。

 阪神では史上初めてとなるオーナー兼球団社長である。オーナーとして球団運営に本腰を入れる、というのであれば、楽しみである。=敬称略=(編集委員)

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