みんながありがとう!広島・石原慶 別れの涙雨にも「幸せな時間過ごせた」 全直球勝負の能見にも感謝

[ 2020年11月8日 05:30 ]

セ・リーグ   広島0-2阪神 ( 2020年11月7日    マツダスタジアム )

<広・神24> ナインに胴上げされる石原慶(撮影・大森 寛明)
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 今季限りで引退する広島・石原慶幸捕手(41)が7日、阪神戦で19年間の現役生活に別れを告げた。途中出場の8回にマスクをかぶり、その裏の攻撃では同学年の能見と対戦。OBの黒田博樹(45)、新井貴浩(43)両氏がサプライズ登場したセレモニーでは「19年間幸せだった」とあいさつし、戦友たちの手で8度、宙に舞った。

 別れを惜しむかのように雨が舞い落ちる。広島ナインや1万6000人を超える観衆が見守る中で開かれたセレモニー。家族や両親、歴代指導者、戦友、裏方さんらに加え、コロナ禍を闘う医療従事者に感謝するあたりが石原慶らしい。ファンへの言葉には一層の力を込めた。

 「苦しかったことの方が多かった野球人生だけど、19年もの間、現役生活を送れるとは思わなかった。声援に勇気や力を与えてもらった。日本一のファンの皆さんの前で引退できることをうれしく思う。幸せな時間を過ごすことができました」

 寂しさとすっきりした思いが胸中で複雑に絡み合う。それでも表情は晴れやかそのものだ。ただ、涙の会沢から花束を手渡された時のみ、こみ上げるものを必死にこらえた。力を認め、泣き笑いを共有した9歳年下の後継者。それは2人だけの特別な時間だった。

 痛めた左脚の治療、リハビリに努めて迎えた現役最後の舞台。佐々岡監督が送り出したのは2点劣勢の8回だった。会沢に代わってマスクをかぶり「今までと変わりなく、投手の良さを引き出せるように」3番手の中田を巧リード。3者凡退に仕留めてみせた。

 雨脚が強まったその裏、無死一塁で打席が回ると、阪神ベンチは同じ79年生まれの能見を投入。全直球勝負を挑んだ左腕に、フルスイングで応えて右飛に倒れ「ナイスボール。わざわざ投げてくれて本当にいい思い出、いい最終打席になった」と配慮に感謝した。

 世界一に輝いた09年のWBC日本代表。リードやキャッチングに定評があり、球団歴代捕手で最多の出場1620試合、通算1022安打は石原慶の誇るべき勲章だ。いや、09年から6年連続サヨナラ打点を挙げた意外性も忘れてはいけない。

 「3連覇を経験した選手が中心にいる。去年と今年の悔しい思いを糧に、どんなチームになっていくのか楽しみ。新しいカープをつくってほしい」

 低迷期からリーグ3連覇の黄金期までを肌で知る。エンディングでは8度宙に舞い、雪辱を誓う後輩たちに熱いエールを送った。(江尾 卓也)

 《愛娘が始球式》始球式では、石原慶が捕手役を務め、長女・華さん(6)が投手、次女・凜さん(3)が打席に立った。先発メンバーがマウンド手前に集合して見守る中、愛娘の投球をつかんで笑顔。「目の前にしたら無意識に(父親の顔に)なった」と照れ笑いした。

 ▼広島・佐々岡監督 寂しい。僕の晩年をリードしてくれた捕手。(現役引退が)監督1年目になって…。今年は食事もできなかった。これからは十分に時間があるので、労をねぎらいたい。

 ◆石原 慶幸(いしはら・よしゆき)1979年(昭54)9月7日生まれ、岐阜県出身の41歳。県岐阜商では2年夏、3年夏に甲子園出場。東北福祉大を経て01年ドラフト4巡目で広島入り。2年目の03年から1軍に定着。16年は正捕手としてリーグ優勝に貢献しベストナイン、ゴールデングラブ賞を獲得。09年WBC日本代表。10、11年は広島選手会長を務めた。1メートル77、90キロ。右投げ右打ち。

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