イチロー以来の偉業視界に…オリックス吉田正 繊細な中に持ち合わせる「ゆるがない自分」

[ 2020年11月1日 09:00 ]

オリックス・吉田正
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 期待と不安が入り交じる日々が続く。首位打者&最多安打と、初の打撃タイトルを視界に捉えるオリックス・吉田正尚外野手(27)だ。打席ではポーカーフェース、代名詞の豪快なフルスイングで淡々と安打を量産しているように見えるかもしれないが、その内面は実は繊細だ。

 「家に帰ると毎日ね、結果を見ちゃいますよね、やっぱり。1日が凄く、長く感じる」

 10月8日のロッテ戦(ZOZOマリン)が雨天中止となり、練習後に心境を聞いた時の言葉。結果を残すために打撃フォームを微調整するなど、常に試行錯誤を繰り返す。「メンタルの部分は変わりなくできている。右方向の長打は減ってきているけど、その分、逆方向の安打は増えている」。打撃の状態だけでなく、タイトルへ最良の道筋を付けるために、と頭を悩ませていることは想像できた。

 徹底した体調管理が、吉田正の性格を物語る。新型コロナウイルス感染拡大の影響で今季は外出自粛が続くが、例年、遠征先などで食事に連れ立つと、吉田正が欠かさず持っているものが、「エアウィーヴ」のクッション。持ち運びできるタイプで肩ひもを下げて、やってくる。過去に悩まされた腰痛の再発防止だ。他にも。元々お酒は得意ではなく、飲むことは“まれ”だが、シーズン中は口にしない。「黒ウーロン茶はありますか?」と必ず尋ね、食事は必ずサラダから手を付ける。

 決してブレない芯がある。18年秋、会食の場で結婚の報告を受けた時、吉田正が席を外したタイミングで、ゆり香夫人から「(吉田正は)凄いマイペースでしょう?ご迷惑をおかけしていませんか?」と声をかけられた。もちろん、こちらが取材で迷惑をかけることはあっても、かけられたことなんてない。周囲を気遣う夫人らしい表現と受け取った。とにかく「揺るがない自分」を持っている。

 侍ジャパンとして出場した昨秋の国際大会「プレミア12」の時もそうだった。打率・200で本塁打なし。一方で鈴木誠が打率・444、3本塁打、13打点。以前スポニチ紙面でも紹介したが、今春キャンプで「鈴木誠也は本当に凄すぎた。自分より年下の選手が。勝負強さもそうですし、あれだけのことを」と漏らした一方で、「自分は自分。シーズン通して結果を出し続ける。チームの勝利につながる一本を打って。5年後、10年後。積み重ねた数字で結果を示したい」と語った。屈辱を喫しても前を向ける強さは、印象深い。

 10月30日の日本ハム戦で自打球が右すね付近に当たった影響で、翌31日の同戦は今季初めてベンチスタート。代打出場で1打数無安打だった。今後も患部の状態次第だが、3年連続となる全試合出場を目指すだろう。過去に、「試合に出続ける人たちは本当に凄い」と語ったことがある。1、2年目の腰痛に悩まされた経験から、長いシーズンを戦い抜く過酷さを痛感し、その記録の重さを認識しているからだ。

 10月31日時点で打率・351はリーグトップで、142安打はソフトバンク・柳田と並ぶ。両タイトルの同時獲得となれば、球団では98年のイチロー以来22年ぶり。残り6試合。自主トレを共にするなど公私で慕う柳田のプレッシャーは計り知れないが、強打者揃いのパ・リーグで「最強打者」の称号をつかむ絶好機。重圧をはねのけた先に、最高の栄誉が待っている。(記者コラム・湯澤 涼)

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