誰もが応援したくなる…オリックス・ドラ1宮城に漂う大器の予感

[ 2020年10月12日 09:00 ]

4日、楽天戦でプロ初先発のマウンドに登った宮城大弥(撮影・井垣 忠夫)
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 山岡泰輔、山本由伸、田嶋大樹…、さらなる飛躍が期待される逸材ぞろいのオリックス投手陣で、また1人、大器の予感が漂う高卒ルーキーが加わった。ドラフト1位左腕・宮城大弥投手(19)。沖縄言葉が素朴で、普段は愛きょうたっぷりだがマウンドに上がると強気のスタイルに一変する。

 「ファームの時よりも観客も入っていますし、なかなか味わえない気分でマウンドに立てました」

 プロ初登板初先発だった10月4日の楽天戦。初回から度胸満点だった。連打で無死一、二塁を背負ってから、鈴木大を外角カーブで右飛に仕留めると、続く浅村は真ん中高め147キロ直球で空振り三振。「自分としても自信になった球でした」。最後の和田にはインステップ投法からのクロスファイアで見逃し三振。5回2失点で勝敗はつかなかったが、ロッテ・佐々木朗、ヤクルト・奥川ら今季の高卒新人投手で一番乗りとなったデビュー戦で、存在感を示した。

 興南では1年春からベンチ入り。1、2年時に夏の甲子園大会出場。鮮烈な印象を残したのは3年夏の沖縄大会決勝の敗戦。延長13回を1人で投げ抜く229球の熱投で、全6試合で計46回61奪三振。U18W杯でも救援した米国戦で9回の1イニングを3者三振と、奪三振能力は高く「世代No.1左腕」の声も上がっていた逸材だ。

 そのバックグラウンドは誰もが応援したくなる。昨秋ドラフト直後にTV放送されたドラフト特番での有名。スポニチ本紙評論家の新井貴浩氏も6日付紙面コラム「新井さんが行く!!」で、そのTV特番を見て「実は幼少期からの境遇を知って以来ファンになり、ひそかに応援してきた」とのこと。父・享さんが交通事故で左手が不自由になり定職に就けず、家計は苦しかった。野球を始めた4歳の時、初めて買ってもらったグローブは700円のビニール製のおもちゃだったこと。ルーのみの具なしカレーが1週間続くこともあったこと。膝部分など何度もツギハギしたユニホームをチームメートから、からかわれても、享さんの「自分が投げている後ろをみんなが守ってくれているんだ」との言葉に支えられたこと。それらを土台に夢舞台にたどり着いた。

 デビュー戦後、中嶋監督代行は「それ(ローテーションで回すこと)は育成として間違っていると思うので」と言った。既に高い潜在能力は認めている。翌5日に出場選手登録を外れたが、近く訪れる2度目のマウンドで今度こそ、プロ初勝利をつかみにいく。(記者コラム・湯澤 涼)

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2020年10月12日のニュース