神宮に歓声…昼は六大学、夜はプロ野球 3試合で2万人超 「新たな日常」へ一歩

[ 2020年9月20日 05:30 ]

朝 チケットを求め列をつくる人々(撮影・河野 光希)
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 【密着ルポ】東京六大学野球の開幕2試合とヤクルト―広島戦が行われた神宮球場は、3試合で合計2万1326人の観客が詰めかけた。応援団、ファン、球場の運営など、「日常」が戻りつつある。スポニチ本紙の花里雄太記者(36)が、神宮の一日を追った。

 4連休初日の朝9時。検温を終えた観客が次々と神宮球場に入っていった。1カ月前、真夏の春季リーグ戦を行った東京六大学は各校100人限定で応援団が復活し、従来の内野席ではなく、外野席へ。ベンチまで距離はあったが、太鼓が奏でる重低音、一糸乱れず華麗に踊るチアリーディング、ブラスバンドのハーモニーは選手の背中を押した。

 内野席の一般客は大声での声援が禁止。得点が入っても肩を組み、誇らしげに校歌を歌えない。息子が早大に通う村松悟さん(49)は、得点のたびに拍手したといい「もっと声を出して応援したいけど、慶応を倒して優勝してほしい」とエールを送った。

 「太鼓の音がすると、野球場に来ている感じがする」と話したのは東京六大学連盟の内藤雅之事務局長だ。神宮球場と連携し、ヤクルトの手法を参考にしながら開催を模索した。改定を重ねてきた新型コロナウイルス対応ガイドラインは、春先から数えて「バージョン14」にまでなったが、「6校が同じ思いだった」とうなずいた。

 試合の合間、プロとの入れ替えの際にもベンチやトイレなど消毒を徹底。ナイターは入場ゲート数を5から10とし、警備員とともに通常の体制になった。この日はレディースデー。鮮やかな青とピンクのユニホームが配られ、球場を彩った。夫人ら3人と今季初観戦に訪れた立石文紀さん(52)は好プレーが飛び出すとメガホンを叩き、「バットの音、ミットの乾いた音が聞こえて、やっぱり生はいいですね」と笑顔。「マスクをして、みんな気をつけているので大丈夫」と帰路に就いた。

 ヤクルトの7回攻撃前には、球場中で傘の花が咲き、8回に広島・堂林が同点弾を放つと、悲鳴と喜びの声が交錯した。大学野球の開始から12時間を超えた22時10分、激闘は広島の勝利で幕を閉じた。今季最多の観衆1万3126人は席ごとに分散退場。東京五輪の会場となる国立競技場のすぐ隣で、野球界が「ウィズコロナ」の日常に向け、また一歩前進した。(花里 雄太)

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