「なんでお前がプロ?」と言われて…元広島・岡林飛翔さんが弟のドラ戦士に託した夢の続き

[ 2020年9月14日 08:30 ]

広島時代の岡林飛翔さん
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 夢破れた直後に、弟がその続きを背負った。中日・岡林勇希外野手(18)の兄・飛翔さん(21)は、広島を昨年限りで退団した元育成投手だった。17年育成ドラフト1位で指名され、19年に戦力外。クビ宣告の15日後に弟が中日にドラフト指名された。

 飛翔さんは、入れ替わりでプロ入りした弟に嫉妬したことはない。「僕は“なんでお前がプロにいけるん?”と言われたこともあります。でも、勇希が活躍すれば、一緒に努力してきた自分の過去も間違っていなかった証明になる」。岡林兄弟は、良き戦友であり続けた。

 飛翔さんが「野球をやりたい」と両親に伝えると、弟も同時に野球を始めることになった。「何でも自分の後ろをついてくるような弟でした」。小学校の授業が終われば急いで実家に戻り、2人でティー打撃をするのが日課だった。

 「勇希は凄い。その頃からサボる気持ちがなかった。それが僕との差だったのかな」

 弟・勇希は、兄が在学中の菰野高校に進学。投手として高卒でのプロ入りを目標に、エースとして頭角を現した兄の背中を追った。一方、3年生だった飛翔さんは、入学直後の弟の投球練習を忘れない。「入学してすぐの練習で141、2キロを出した。正直、力の差を凄く感じました」。高3夏の県大会では、飛翔さんが先発し、弟・勇希が2番手としてピンチを火消しした試合もあった。「兄弟リレーをできたことが一番の思い出。強豪校からの勧誘もあったと思うけど、同じ菰野高校に来てくれたことがうれしかった」。

 プロ野球選手の先輩として、1度だけ助言したことがある。高校で“二刀流”として活躍した弟は、ドラフト後も投手か野手のどちらに専念すべきか決めきれずにいた。「長くプロ野球選手でいたいなら、野手の方がいいと思う」。外野手登録でのプロ入りを後押しした。

 勇希は7月30日の広島戦で、兄がプレーできなかったマツダスタジアムでプロ初安打を放った。現在大学1年生として大量の課題に追われる飛翔さんは「まさかのマツダでしたね」と笑う。兄弟での二人三脚は、広島で一つの区切りを迎えた。(記者コラム・河合 洋介)

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2020年9月14日のニュース