田沢ルール撤廃の背景――日本の育成環境充実で薄れた人材流出の懸念

[ 2020年9月7日 21:01 ]

レッドソックス時代の田沢
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 今回の「田沢ルール」の撤廃は、時代の流れと言っていい。08年オフにNPBのドラフトを回避して田沢が海を渡ってから12年。プロ野球の育成システム、練習環境などは大幅に進歩しており、日本のアマ選手が直接米球界入りするメリットは少なくなっている。

 日本では、2軍選手も育成選手も寮で個室が与えられ、食事の心配もなく、試合のための移動の負担も軽微だ。食事はハンバーガー中心で長距離のバス移動など、MLBのマイナー選手と比べれば格段の違いだろう。一方でマイナー選手のようなハングリーさも重要との指摘があるのは確か。ただ、ソフトバンクの千賀や周東、ロッテの和田ら育成からはい上がって1軍で活躍する例は、近年の日本の育成システムの充実を示している。

 過去、日本からドラフトを経ずに直接米球界入りし、メジャーに上がれたのはマック鈴木、多田野数人と田沢の3人だけ。それは直接米球界入りのデメリットを表している。日本では海外FA権が9年で、ポスティングシステムもあり、NPBを経てメジャーという流れが定着。花巻東時代にメジャー挑戦を希望しながら日本ハム入りし、5年後にエンゼルス入りした「二刀流」大谷翔平はNPB経由でメジャーの大きな成功例だろう。

 08年当初、アマ球界側が懸念したのが米球界による青田買い。その懸念も今はほとんどない。「田沢ルール」撤廃は、直接米球界入りを抑止する必要もなくなったということの表れなのだろう。(専門委員・秋村 誠人)

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2020年9月7日のニュース