【藤川と一問一答(5)】恩師たちに感謝「弱い自分がいたときにさらにキツい言葉をかけられると頑張れる」

[ 2020年9月1日 17:32 ]

引退会見で涙をこらえる藤川(撮影・大森 寛明)
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  8月31日に今季限りでの現役引退を球団が発表した藤川球児投手(40)が1日、兵庫県西宮市内で会見にのぞんだ。以下は一問一答((4)から続く)。

 ――残りがまだあるが、これまでを振り返ってうれしかったこと、苦しかったこと、どっちが多いか
 この前、長嶋一茂さんがテレビで言うてたんですけど、100勝99敗みたいなこと言うてたんです。だいたい人生って。だからそんなもんなんだろうと。別に誰かと比べていることもないから。苦しい、楽しい、これ以上あるのかないのかもこの先の人生分からないじゃないですか。振り返ると苦しかったけど、僕は自分に勝ちましたからね。だから、楽しかったでいいんじゃないですか。たくさんの方に藤川球児という人を知ってもらえたというのは、生きてる中でこんな最高なことはないと思うんですよ。僕は幸せをファンの方、後輩先輩にいただいたんでね。これから先、あと2カ月半、現役生活が終わっても、みんなが苦しい時、世の中が苦しいときに少しでもストレスが発散できる時に野球場で発散できるように。そういうことを受け入れて戦ってきたいくつもりなんで。今後も誰かが苦しいときに人に寄り添えるような、そういう生き方がしたいなと思っている。苦しいも楽しいも全部人生経験なんで、おもしろいですよ。

 ――先ほどタイガースは父親みたいな存在と言っていたが、タイガースに入って良かったか
 この人生しかないし、名前も藤川球児じゃないですか。ほかのたくさんの選手に失礼かもしれないけど、みんなも同じように思ってると思うけど、自分が一番タイガースに似合ってると思います。

 ――いままでずっと有言実行できたが、最後どういう形で終わるか
 そうね、有言実行できなかったシーズンですからね、今年は。だから辞めてくわけやし。この瞬間に、有言実行がもう一度あるかと言えば、僕は二度はないような人生。別に自分じゃなくていいんですよ。何年後かして、そういうエキスが残って、このチームが素晴らしいチームになっていくはずなんですよ。約束は…長い目で見て、今居る選手たちは若いですから。僕がいると僕以上は出てこないかもしれないし、いなくなった方が出てくる気がします。

 ――高校時代の恩師たちのからの言葉を受けて
 これは僕に限らず、これくらいの年齢までやった選手だったり。一般の方々でも、成長をしようとした時に何が自分を成長させてくれたのかは優しい言葉ではなくキツい言葉。僕はそうだった。正木先生からは「細く長くやれ」と。「お前の性格を知っている。嫌になったらすぐ辞めるだろ。そうじゃなくて細く長くやれ、10年やりなさい」と言われたのが自分の中にずっしり入ってて。実はやるの嫌だったんですよ。怪我ばっかりして、クビにはなりそうになるし、いつでも辞めてやろうと思ってたし。今考えるとただのしょうもないクソガキなんで。でも、恩師の言葉は、お前が一番嫌うであろうという言葉の方が自分の記憶に残ってる。岡田監督であったら、10連投したことあったけど、他のピッチングコーチももちろん守ってくれて。「無理して投げることはない」と言ったけど、岡田さんは「投げられないなら入るな」と。ドライなんですよ。仕事として捉えてる。だから「俺はそんなもんじゃない。やるときめたらとことんやれ」と。未だにそれが残ってるし。良い言葉、甘い言葉は全く身になっていない。上田先生からは、僕が嫌で野球を辞めようとしたとき、中学校の時「野球辞めるんやったら名前変えろ」と本当に言われた。全然知らない人に。兄に弟が入らないと意味ないぞと言われてたらしいんで。中学校の1年です。僕は逃げたがるんですよ。弱い自分がいたときにさらにキツい言葉をかけられると、頑張れるんですよ。甘い言葉はいらないのかもしれないですね。本物の自分を作り上げるのならば。親だけでいいんじゃないですか、それは。タイガースの選手にもそれが言える。窮地の中から立ち上がっていく選手ほど強いものがある。

 ――2015年に独立リーグでプレー。そこで投げる姿を見た子どもたちが高校球児に。そういった子たちも含め、残りシーズンでどんな姿を見せたいか
 今、この状況から自分が見せられることは、最後の一踏ん張りのところまで来ている。それは年齢問わないと思う。自分が子どもたちにどう何かを与えようか、どう希望を持ってもらおうかとか、選べない。周りがどう感じてくれるかは後のことなんで。自分が正解だと思うことを貫いてやり抜いていくということの方が。みんな受け取り方は自由なんで。せっかくこういう仕事をさせてもらっているから、誰かに影響されるんじゃなくて、自分だけの生き方をして、それが人にどう映るかの方が、自分もリラックスできて楽しいし、グラウンドで自由に暴れ回ることができると思う。また、見て感じて、みなさんのペンの力、取材の力で、それをやってもらってきたわけですから。自分が育ってしまったので。今、自分の思う自分以上の自分がいまグラウンドにはいる。同じように作り上げてもらえれば、子どもたちのためになるんだろうなと思う。

 ――是非もう一踏ん張りしてください(笑)。
 いつでもやるし。自然にできる。もう身についているんで。逃げたくなる自分がいてもそんなに甘くないですよ。自分に厳しいことを言ってくれる人から逃げずに、その人について回れるくらいになったら、絶対にあとからいい思い出になる。それは言える。お父さんお母さん厳しくて家出したりとかね(笑)

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2020年9月1日のニュース