【内田雅也の追球】けん制に見えた「足の重圧」 7球“もらった”近本が引き出した得点 阪神貯金ターン

[ 2020年8月31日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神5―3広島 ( 2020年8月30日    マツダ )

延長10回無死一塁、フランスアのけん制球で一塁に戻る一走・近本(右は一塁手・松山)(撮影・坂田 高浩)
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 阪神が記した1、10回表の得点は、いずれも先頭打者の近本光司の出塁が起点となっていた。1番打者の出塁が得点につながりやすいのは当たり前で、そのためにオーダーを組んでいるのだが、特に俊足・近本の場合は塁上で相手バッテリー、さらに守備陣に与える重圧が大きい。

 現に、セ・リーグ盗塁数最多(15個)の近本だが、この夜、盗塁はなかった。走らずして相手を追い詰めていた。

 たとえば、1回表は遊ゴロ内野安打で出た。以後、木浪聖也と糸井嘉男の打席で、広島先発の遠藤淳志が一塁上の近本に計6球もけん制球を放っている。各打者への投球とけん制球を順に記してみたい。記号は○=ストライク、●=ボール、-=ファウル、◎=打球、ケ=けん制球である。

 <木浪>ケ●●○ケケ-◎(二飛)
 <糸井>○○ケ●ケケ●●●(四球)

 2人に11球投げる間にけん制を6球と相当に神経を使わせている。この間、近本がスタートを切ったんのは木浪の4球目だけで、ファウルだった。相手バッテリーに警戒させたおかげで糸井は2ストライクと追い込まれながら、4球連続ボールで四球を選んでいる。

 こうして1死一、二塁と好機を広げ、ジェリー・サンズの先制3ランを呼び込んだのだ。

 延長10回はどうか。近本は先頭打者でクローザーのヘロニモ・フランスアから四球を選んだ。

 1点勝負で送りバント濃厚の場面。それでも相手は動きを警戒し、木浪へ初球を投げる前にけん制球を投げさせている。

 さらに木浪のバント成功で1死二塁となると、相手外野陣に前進守備を余儀なくさせた。同点の延長戦で前進守備は当然だが、俊足の近本が二塁とあって、外野手は通常の前進守備よりも前にきていた。2、3歩前だったろうか。

 おかげで2死一、二塁から大山悠輔が放った右中間飛球に追いつけず、決勝三塁打となったのである。打球はちょうど右中間の中間あたりで、最後は右翼手・鈴木誠也がわずかに及ばなかった。先に書いた2、3歩の差で決勝打となったわけである。走者・近本は陰の殊勲者だと言える。

 いわゆる「足の重圧」をはかる材料として、相手投手にどれだけけん制球を投げさせたかをみてみたい。阪神の9球(近本7、江越大賀1、梅野隆太郎1)に対し、広島は3球と圧倒している。

 阪神投手陣が放ったけん制球は、9回裏2死一塁で、岩貞祐太が走者・田中広輔に投げた3球だけだった。余計な走者警戒は不要で、ムダなけん制球もない。それだけ打者への投球に集中できていたと言えるだろう。

 かねて、打者の表彰項目に「得点王」(最多得点打者)の創設を望んでいる。近本は安打数や盗塁数以上に得点数に重きを置いているそうだ。この夜の2得点で40点に到達し、目下リーグ5位。1位は梶谷隆幸(DeNA)の45点で「得点王」も狙える成績である。

 阪神はシーズンちょうど半分の60試合を終えて、貯金ができた。開幕後は不振を極めた近本が8月はリーグ最多の月間38安打も放って復調したのは心強い。=敬称略=(編集委員)

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