阪神・陽川 “ソロ”コンプレックス払しょくの3ラン 矢野監督「ゴリラパンチがすごくいい場面で出て」

[ 2020年8月27日 05:30 ]

セ・リーグ   阪神11-3中日 ( 2020年8月26日    甲子園 )

<神・中(11)>インタビューを受ける陽川(右)ニバナナをマイク代わりに差し出すガルシア (撮影・奥 調)
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 阪神は26日、中日に11―3で大勝した。打線に火をつけたのは、陽川尚将内野手(29)で、1点劣勢の6回1死一、二塁で左中間へ今季1号の逆転3ラン。連日の3番起用に応えた和製大砲の躍動で、チームは3位に浮上した。

 追い求めてきた1本を最高のシチュエーションで体現した。2者を生還させ、陽川は力強く本塁を踏んだ。待望の放物線を描いたのは1点劣勢の6回だ。

 「長打力が持ち味なんで。結果として出て良かった」

 1死一、二塁で福谷のフォークを強振した。左中間スタンドに着弾する今季1号逆転3ラン。「ガルシアが頑張ってた。ああいう形になって良かった」。力投した助っ人左腕にも白星を送る、価値ある本塁打になった。

 2年がかりの“自己否定”にようやく終止符を打てた。外国人にも引けを取らない怪力の持ち主。当然ながら期待されるのは豪快なアーチだ。それでも、昨季終了後「ホームラン」という言葉に、表情は険しくなった。

 「ホームランって言っても、全部ソロですから…。ソロ1点だけじゃダメだと思う。得点圏だったり、そういう時に長打を打てるようにならないとチャンスは減っていく」

 実は、18年9月から昨年まで放った本塁打は5本連続でソロだった。会心の当たりでも、どこか物足りなさを感じていた男がこの夜、一振りで3点を叩き出し“コンプレックス”を払しょく。矢野監督からは「陽川のね、ゴリラパンチがすごくいい場面で出て、本当に最高なホームラン。僕自身もうれしいし、陽川の成長もある」と称えられた。

 表情が違った。20代最後の1年を過ごすプロ7年目。年明けから、ギリギリまで自らを追い込む姿があった。「僕は2月1日から100%でいける状態じゃないとダメなんで。そのための準備」。年明けの和歌山での自主トレでは、例年よりも走り込み、スイング量を増やして連日、日が暮れるまで汗を流した。拠点とする上富田スポーツセンターにある急勾配の階段は何往復したか分からない。足がつる寸前まで腕を振り、坂を登った。

 前日は2打点を挙げ、連日の3番起用に応えたが満足感はない。「僕は一打席で勝負してる。悔いのない打席を」。ゴリラキャラで親しまれ、お立ち台ではバナナをマイク代わりに「久々のGPなんで良かったです」とワイルドに宣言した。「ジーピー」とは「ゴリラパンチ」、すなわち背番号55の一発だ。“生みの苦しみ”を味わった男の“GPラッシュ”が始まる。 (遠藤 礼)

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