ヤクルト・ライアン 原点回帰フォームで史上82人目ノーヒッター!「5回から意識」

[ 2020年8月16日 05:30 ]

セ・リーグ   ヤクルト9―0DeNA ( 2020年8月15日    横浜 )

<D・ヤ>ノーヒットノーランを達成し、西田と抱き合う小川(撮影・島崎忠彦)
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 ヤクルトの小川泰弘投手(30)が15日、DeNA戦でプロ野球史上82人目(93度目)の無安打無得点を達成した。打者32人で許した走者は3四球と失策だけで昨年9月14日の中日・大野雄大投手(31)以来、セ・リーグ40人目(同43度目)の快挙。メジャーで7度の同記録達成を誇るノーラン・ライアン氏(73)を参考としたフォームで新人だった13年に最多勝を獲得した右腕が輝きを増し、チームは連敗を5で止めた。

 歓声はない。送られたのは拍手のみ。だからファンの分もナインが喜びを表現した。一斉にベンチを飛び出す。手には水の入ったペットボトル。マウンドの小川は一瞬でびしょ濡れだ。30度超えの酷暑の中で135球。コロナ禍による入場制限で目撃者は4910人だが、プロ8年目での快挙に酔いしれた。

 「(意識したのは)5回くらい。そんなに簡単にいかないことは分かっていたが打者一人一人に集中できた」

 前回8日も同戦だったが5回4失点でKO。リベンジの思いを胸に序盤から凡打の山を築いた。許した走者は3四球と失策のみ。圧巻は8回だ。無死一塁で中井に遊撃へのゴロを打たせたが二塁ベースカバーに入った広岡が併殺を焦り遊撃・西浦からの送球を捕球ミス。無死一、二塁となっても顔色一つ変えず「切り替えろ」と声を掛け、後続を断った。効果的にフォークを使い、最後の打者・乙坂から奪った10個目の三振も同球種だった。

 身長1メートル71。恵まれた体格ではないが創価大時代にメジャー通算324勝のノーラン・ライアン氏の投球フォームを模した左足を高々と上げる独特の形をつくり上げた。18年の契約更改時に体への負担を考え、一度は同フォームとの決別を宣言。だが新フォームがなじむことなく、昨年の開幕直前には原点回帰した。同年は5勝12敗も「足は上げ続けます」とぶれることはなく、ダイナミックなフォームは今季も健在だ。

 独り立ちした。一昨年のオフまで元巨人の上原浩治氏と自主トレを行ってきたが、同氏が引退し昨オフは石川に紹介された都内のジムで単独自主トレ。ウエートトレが終わってから「下半身にもメンタルにも効く」というショートダッシュを繰り返し、心身ともに追い込んだ。暑くても、ピンチでも、決して動じない精神力が快挙につながった。

 開幕前の実戦2試合で4回1/3を11失点。それでも高津監督から信頼され“おまじない”もかけられた。「練習試合と公式戦は別物だから」。これで吹っ切れた。開幕から自身4連勝を記録するなど早くも昨季に並ぶ5勝目に「おまじないのおかげ。今日の勝利はみんなで勝ち取った勝利」と笑顔。指揮官にも最高の形で恩を返した。(黒野 有仁)

 ◆小川 泰弘(おがわ・やすひろ)1990年(平2)5月16日生まれ、愛知県出身の30歳。成章3年春に21世紀枠で甲子園出場。創価大では3年秋に東京新大学リーグ新記録の防御率0・12など、通算36勝3敗(23完封)。最高殊勲選手に5度輝いた。12年ドラフト2位でヤクルト入団。1年目の13年に16勝4敗、防御率2・93。最多勝、最高勝率、新人王を獲得した。1メートル71、80キロ。右投げ右打ち。

 ▼ヤクルト・高津監督 7回を抑えた後、残り2回。今日の調子ならやってもおかしくないと思った。高さの制球も良かったし、真っすぐにも力があった。

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