栗山監督通算600勝 1勝目は8年前、初の開幕投手を務めた斎藤佑樹が贈る【紙面記事プレーバック】

[ 2020年8月15日 20:15 ]

パ・リーグ   日本ハム9―1西武 ( 2012年3月30日    札幌D )

2012年3月30日、日本ハム・栗山監督(左)は、西武との開幕戦で勝利を飾り、監督初勝利を飾る
Photo By スポニチ

 日本ハム・栗山監督が15日、ロッテ戦に勝利し、プロ野球史上24人目の600勝を達成。1勝目は初の開幕投手を務めた斎藤佑樹が贈った。当時(2012年3月31日付)のスポニチ紙面記事をプレーバックする。

 ※ ※ ※

 もう「持ってる」だけの男ではいられない。開幕戦という大舞台で、プロ初の完投勝利。ウイニングボールを栗山監督に手渡した斎藤は、大歓声の中でのお立ち台で堂々と言い切った。

 「今は持っているのではなく、背負っています。1年を通して開幕を斎藤でいって良かったと言われるようにしたい」

 失点を重ねたオープン戦とは別人のような投球を見せた。今春キャンプでは昨年に比べて振りかぶったときにグラブを少し上に位置させ、さらに大きく踏み出していた左足の歩幅を小さくし、一方でフォームの初動から曲げていた右の軸足を一度伸ばしてから折るようにした。左足で思い切りマウンドで蹴ることで反動をつける。力のある球を求めてのフォーム改造だった。それでも結果は出ない。そこで開幕前に腕の振りの通りの球を投げれば打たれやすいと分析。若干力を抜いて、プロ自己最速145キロの直球を「腕の振りとは違うスピード」になるよう工夫した。西武打線は思ったよりも遅い球に芯を外され力ない飛球を打ち上げた。疲れも省エネできる「魔球」は夏の甲子園優勝を果たした早実時代にも使っていたという。

 「今は頭が真っ白というか…凄く興奮しています。栗山監督になって、開幕投手の手紙を渡されオープン戦で結果が出ない複雑な気持ちもあって凄いプレッシャーだった」

 偽らざる本音だった。開幕投手を目指してはきた。ただ、武田勝という実績十分なエースがいることで、どこかに甘えがあったのかもしれない。栗山監督から「もっと必死さを見せろ!」と怒られたこともあった。それでもオープン戦では結果が出なかった。それだけに、3月18日に指揮官から開幕投手を伝えられた際に、思わず涙が頬をつたった。もちろん、球界内外で自身の開幕投手に対する疑問の声は嫌でも耳に入ってきた。ここで打たれたら栗山監督に批判の矛先が向けられることも十分承知していた。裏切れない…。重圧と戦って出した1失点完投勝利。試合後も「(開幕が)斎藤で良かったと言われるように1年間機能したい。今は答えは出ない。満足はしていない。ただ何かをつかむいいきっかけにはなったかな」と慎重に言葉を選んだ。

 この日の試合前には選手、コーチ、スタッフ全員で栗山監督の座右の銘「夢は正夢」と書かれた杯で水杯を交わした。そして開幕勝利という正夢をかなえた。「ダルさんのいなくなった穴は、隙間だらけかもしれないけど少しずつ自分が埋められるように頑張っていきたい」。期待、重圧…。さまざまなものを乗り越えてつかんだ1勝が、斎藤を新エースに押し上げる。

続きを表示

この記事のフォト

2020年8月15日のニュース