進学校・日高 智弁和歌山・小林打ちの影に「守備を捨てて打撃に専念」あり

[ 2020年8月5日 14:50 ]

和歌山大会準決勝   日高3―12智弁和歌山 ( 2020年8月5日    和歌山市・紀三井寺 )

 大差で敗れたとはいえ、6回の3得点が光り輝いていた。公立の進学校の日高が、智弁和歌山の150キロ右腕・小林樹斗投手に4連打を浴びせた。

 「出てきてくれてうれしかったです」と振り返ったのは4番の杉元優斗二塁手(3年)だ。1死一、二塁でマウンドに上がった高校球界の逸材は、松原小、松洋中のチームメイト。前日はLINE(ライン)で「対戦したいな」とメッセージを交換していた。公式戦で対戦するのは初めて。149キロ、148キロと2球続いてボールとなった次の148キロ直球を、左前へきれいに流し打ちし、チャンスを広げた。

 「ヒットは気持ち良かったです。他の投手より、それは速かったですよ。一塁ベースで小林と目が合って、悔しそうにこっちを見ていました」

 1死満塁から矢田海都中堅手(2年)、巽耀蔵遊撃手(2年)、村松大地三塁手(3年)もクリーンヒットを浴びせて3点を奪った。矢田は141キロのカットボールを遊撃強襲の内野安打、巽は151キロの直球を右前へ、村松は150キロの直球を中前へはじき返した。

 7回にも1本追加し、計5安打。なぜ、公立の進学校が150キロ右腕から次々と快音を響かせられたのか。

 日高の井口将克監督は「守備も、打撃も、はできない。守備を切り離してチームをつくった」と明かす。7時間目まで授業がある関係で、平日は2時間半から3時間の練習。ノックはほどほどにして、打撃と“筋トレではないトレーニング”に時間を割いた。

 グラウンドは他クラブと共用のため、打撃練習はネット方向に向かってしか打てない。近距離からの速いボールと緩いボールを打ち、ティー打撃は投げる場所を打者の後ろから、横から、ワンバウンドを打つなどの工夫をして、様々な球への対応力を磨いた。

 故障防止と身体能力の向上を目指して、専門家の田中優樹トレーナーを招いて、工夫を凝らしたメニューを選手に与えた。

 「野球をうまくなるには、野球だけやっているだけではだめ。ヒントは他にあります」と井口監督。ボルダリング、砂浜でのサッカー、ヨガ、鉄棒…。昭和の時代は遊びで養えた感覚を、現代風のトレーニングに形を変えて鍛えた。体の芯を鍛えることで、打撃力向上を目指した。

 守備に目をつぶったことは、この日、2失策だけでなく、細かい守備のミスの引き金になった。しかし、「野球の醍醐味は打つこと。それにこだわりたい」と指揮官は強い信念を持つ。野球人口の低下を憂い、地元の小・中学生の指導者との交流も重ねる。昨年12月には、「日本高校野球連盟200年構想」の支援を使って、地元の小学生81人に、肘の故障診断、栄養指導などを無料で受けさせた。

 怒鳴る、故障をがまんさせる、小中学生へのそんな指導が、各地でまだ残っている。子どもたちに野球をしてほしい、続けてほしい、面白さを知ってほしい願いで、高校野球以外にも活動の輪を広げている。まいた種はいつ花開くか分からない。ただ、今大会はドラフト候補打ちと、16年ぶり4強という形で成果が表れた。

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