奈良大付 智弁学園を初撃破!喜多主将、熱中症も本能でチーム引っ張る

[ 2020年8月5日 13:40 ]

令和2年度奈良県高等学校夏季野球大会 準決勝   奈良大付12―8智弁学園 ( 2020年8月5日    佐藤薬品スタジアム )

<智弁学園・奈良大付>4回2死一、二塁、勝ち越しの中前適時打を放ち、一塁上でマウスピースを外す奈良大付・喜多智也
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 ついに青のプライドが、しぶとく食らいつく赤い名門を振り切った。両軍合わせて31安打20得点、2時間49分の大熱戦。奈良大付が直接対決12回目の挑戦にして、先発全員の16安打を放ち初めて強豪・智弁学園を撃破した。

 昨秋奈良大会決勝では4―0とリードしながら、最終的には6―7で敗れた因縁の相手。「1番遊撃」の主将・喜多智也(3年)が初回に中越えへフェンス直撃の三塁打を放ち、次打者の二ゴロで先制のホームを踏むと、4回2死一、二塁では決勝の中前適時打。その後も右へ左へ快打を連発。5打数4安打2打点と爆発した。

 だが、その代償も大きかった。気象庁によると、13時現在で奈良の最高気温は34・0℃。6回から全身のだるさを感じ始め、守備では7―6の1死走者なしから失策。2死一塁から中堅への大飛球が打ち上がった。「自分のせいで同点に…」。ところが、吉岡耶翔(やまと=3年)がフェンスに左脇腹を強打しながらスーパーキャッチ。チームに勇気と流れを与えてくれた。

 喜多は前日の打撃練習が終わってから、田中一訓監督と2人で2018年夏の甲子園に奈良大付が初出場した際の羽黒(山形)との1回戦の映像を見た。聖地で快音を連発する2歳上の先輩たちを見て気づいたのは、準々決勝までの自分の打撃フォームにタメが利いていなかったこと。頭の中で整理し、意識できたから生まれた4安打&V打だった。6回以降は立っているのもつらかった。それでも8回にも左前打。主将として、背中でチームを引っ張った。「準決勝で智弁学園とやらせてもらえるチームになれたのは、これまで、どんなに暑くても大変でも、監督さんやスタッフの方々が自分たちにノックを打ち、いろいろなことを準備して、支えてくれたから。最後まで出て、どうしても勝ちたかった。監督さんやスタッフの方々に恩返しがしたかった」。美談や根性論ではなく、感謝の気持ちが、本能が、試合に出続けるという選択をさせた。

 試合後は医務室に直行し、手当てを受け回復。しかし智弁学園の選手1人も同じく熱中症で意識ははっきりしているものの、救急車で橿原市内の病院へ搬送された。奈良県の高校野球史において語り継がれていくであろう、まさに死闘。喜多は最後までウイニングボールを固く握りしめたまま、真っすぐ前を見つめて言った。「監督さんに渡します」。

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