新井貴浩氏 阪神V字回復の要因は――4番・大山の「奪い取る」原動力、梅野の正捕手固定も吉

[ 2020年7月22日 05:55 ]

セ・リーグ   阪神9―4広島 ( 2020年7月21日    甲子園 )

<神・広>5回2死一塁、2ランを放ち、笑顔でナインに迎えられる大山(撮影・平嶋 理子)
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 阪神は21日、広島戦で打線が4本塁打を放つなど9得点で快勝し、5連勝。開幕から2勝10敗の「100敗ペース」で最大で借金8を抱えていた惨状から、その後の13試合を11勝2敗として一気に貯金生活に突入した。V字回復の要因は何か…。スポニチ本紙評論家の新井貴浩氏(43)が強さに迫った。

 得点能力が格段に上がったことが、阪神が劇的に巻き返した要因だ。何より4番・大山の存在が大きい。離脱したマルテに代わって4番に座ってから、チームは10勝2敗。もう代役ではなく、マルテ以上の打撃で打線を引っ張っている。

 開幕当初は控え。相当に悔しかったと思う。昨季は4番に抜てきされ、苦しみながらも一定の成績を残し、いい経験を積んだ。今季こそ…と臨んだ4年目。春のオープン戦を首位打者で終えたように結果を残しながら、定位置を奪われた。チャンスを「与えられる」立場が一変。出たくても出られない日々はプロでは初めてだったと思う。「与えられる」のではなく「奪い取る」しかない。この思いが、今の原動力になっている。

 5回は高めに浮いた初球のフォークを力強く引っ張った。ボール気味でも関係ない。甘い球を見逃したり、狙い球だったのかな?というもったいない凡打があった昨季とは違う。たとえ空振りでもスイングに迷いがない。この一球を逃さない、という強い気持ちが表れる本塁打だった。

 梅野が正捕手に固定されたことも好転の要因として欠かせない。開幕当初は先発投手に合わせるように先発捕手も日替わりだった。もちろん、矢野監督なりの考えで、いろんなことを試しながらの起用だったと思う。その中で梅野が、やはり、扇の要として存在感を示し、チームとして戦い方が安定した。元々打力がある上、昨季から状況に応じてバットを短く持つなど工夫ができるようになった。下位打線であれだけ打ってくれれば、得点力は上がる。

 捕手としてはワンバウンドの球を捕る能力が12球団でトップクラスだと思う。広島に反撃された7回、秋山を救援した馬場の初球はベースの相当手前ではねるボールだった。あれを押さえるのだからスゴい。登板早々に暴投で走者を進めていたら、経験の浅い馬場には一層の重圧がかかる。梅野の存在が投手陣に安心感を与えている象徴的な場面だった。(本紙評論家)

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2020年7月22日のニュース