ファン待つ静寂の3・20東京ドーム…巨人担当キャップ、幻の開幕日ルポ

[ 2020年3月21日 07:00 ]

試合中止の文字を表示する東京ドームの電光掲示板(撮影・木村 揚輔)
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 【BALL PARK】新型コロナウイルス感染拡大の影響で20日の開幕が延期となり、巨人―DeNAが予定されていた東京ドームは閑散としていた。本拠地とする巨人は練習試合や全体練習も行わず、休養日に充てた。本来は球春到来でにぎわうはずだったドーム周辺の様子を巨人担当キャップの神田佑記者(36)がリポートし、取材現場の現状や選手の声を伝える。

 東京ドーム周辺を歩くと、最初に目についたのが「本日の試合は中止となりました」という巨大電光掲示。ポカポカ陽気だが、人はまばらで寂しい。各入場口はシャッターで閉められており、チケット前売り所では払い戻しが行われていた。

 2年前の開幕戦を思い出した。初の開幕スタメンを勝ち取った吉川尚の両親を取材するため、22ゲート前の広場で待ち合わせた。「開幕祭」と題し、特設ステージに、巨大だるま、路面店。来場者の長蛇の列もあってごった返し、人をかき分けながら両親を捜した。応援のために岐阜から上京し「開幕戦って、まるでお祭りなんですね!」と、胸を高鳴らせていたのが懐かしい。

 隣接する遊園地「東京ドームシティアトラクションズ」は31日まで臨時休園中。東京ドームホテルは海外からの観光客も減る中、相当数予約のあった宿泊と巨人戦チケットをセットにした「観戦宿泊プラン」のキャンセルが相次いでいる。

 取材時のマスク着用が球団からの要望で始まった2月16日は、まだ開幕が延期されるとは思っていなかった。現実として感じ始めたのは同25日。沖縄2次キャンプの帰京日だった。

 チームと同便で羽田空港に午後6時前に到着。スマホの機内モードを解除すると、同7時から行われる緊急説明会の案内が届いていた。その足で大手町の球団事務所へ。発表されたのは29日、3月1日のオープン戦主催試合の無観客開催。翌26日の12球団代表者会議ではオープン戦残り全試合を無観客で行うことが発表された。

 2月28日から球場入り口で検温が行われ、3月3日から密閉した通路や室内での取材が制限された。球団の計らいで選手をグラウンドに呼び、話を聞く。顔を覚えてもらうことが最初の仕事である新任記者もマスクで「顔見せ」すらできない。

 NPBとJリーグ連絡会議の感染症対策に関する提言は球団、球場関係者の他に報道関係者も含まれている。幸いにも感染報告はないが、報道陣にも常に「もし“第一感染者”になってしまったら…」という恐怖感がある。取材対象に迷惑をかけてしまい、自身のせいで試合日程にまで影響を与えかねない。

 4月10日以降の開幕延期は12日に決まったが、球団は危機管理のため「決定後では対応が遅れる」と事前に4月3、10、17、24日の金曜日で4パターンをシミュレーションしていた。本来開幕日だった3月20日以降についても、一時は合宿や2軍同様に東西の球団で練習試合を組むことも念頭にあった。

 不透明な日程の中、選手は困難な調整を強いられている。宮本投手チーフコーチは「アスリートは目標日が決まってからの逆算。目的日が決まらないと結構つらい」と、投手陣にオープン戦期間中は最短の4月10日に照準を絞らせた。同日から公式戦143試合を想定しても、練習試合を含め160試合近く戦うことになる。ある主力野手は「難しい。ピークをどこに持っていくのか、つくらない方がいいのか」と話す。

 球団も、選手も、そして記者も願いは一つ。ファンと祝う歓喜の球春到来。来る日を信じ、球団は4万人超の来場者が使用する消毒液、体温をチェックするサーモメーターなど着々と準備を進めている。

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