日本ハム・矢野コーチのぶれない3つの指針

[ 2020年2月1日 09:00 ]

日本ハムの千葉・鎌ケ谷の2軍施設で育成の海老原(左)の素振りを見守る矢野外野守備コーチ兼打撃コーチ補佐
Photo By スポニチ

 朝は5時に起床。日が昇る前に神奈川県内の自宅を出て車のハンドルを握る。目的地は千葉・鎌ケ谷にある日本ハムの2軍施設。練習する選手らを観察し、育成の海老原には打撃だけでなく守備、走塁の指導も行っている。球場を出るのは午後5時。新任の矢野謙次外野守備コーチ兼打撃コーチ補佐(39)は昨年12月から今年1月にかけ、そんな生活を繰り返した。

 巨人、日本ハムで代打の切り札として活躍し、18年限りで現役を引退。特命コーチとしてレンジャーズにコーチ留学した。メジャーの指導法などを吸収し「向こうにもいいところがあるし、逆に日本にもいいところがある」と実感。昨秋の沖縄・国頭キャンプから現職となって選手指導をスタートさせた矢野コーチには、絶対にぶれることのない3つの指針がある。

 (1)選手から目を離さない
 立場は変わっても現役時代と同様、誰よりも早くグラウンドに姿を現す。選手の表情、動きから、何で悩み、何をやろうとしているのかを自分なりに探り、必要とあれば声を掛けるためだ。「毎日、見なければ変化に気づけない。おかしな動きに気づけば、ケガを防止することができるかもしれない」と力を込める。

 (2)一方通行の指導はしない
 昔の指導者に見られた、押しつけの指導はしない。「自分が思うイメージは指導者と選手の共同作業」と言う。1軍の試合には評論家など球団OBの来場も多く、多くのアドバイスを聞きすぎて迷ってしまう若手も多い。「本音をぶつけ合って、些細なことであっても一方通行にならないようにしたい」と語る。

 (3)常に念頭に人間教育を置く
 野球だけしていればいいという時代ではない。引退後の人生も長い。チームの看板選手に成長する可能性がある清宮には選手時代から事あるごとに練習に取り組む姿勢や生活態度などで教育を施した。「人間的な成長が野球の成長につながる」という考えは栗山監督にもある。「野球を通して人間としての成長も促したい」と目を輝かせる。

 1月下旬、鎌ケ谷で矢野コーチと久々に会った。現役引退から1年以上も経ても引き締まった体型を見て「全く変わらないね」と声を掛けると「体重も体脂肪も現役時代と同じ。選手と一緒に汗を流すにためには自分のコンディションも大事ですから」と返ってきた。

 プロ野球界の「正月」でもある2月1日。日本ハムは沖縄・名護で春季キャンプを開始した。西川、大田、近藤らの兄貴分のような存在だった矢野コーチは、5位からの巻き返しを狙うチームに新風を吹き込むはずだ。(記者コラム・山田 忠範)

続きを表示

2020年2月1日のニュース