【内田雅也の追球】「重さ」破った作戦――崖っぷちの阪神が見せた2度のエンドラン

[ 2019年9月25日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神5―0巨人 ( 2019年9月24日    甲子園 )

<神・巨25>初回、北條は左前打を放つ(撮影・成瀬 徹)
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 終わってみれば5―0の快勝だが、阪神はどうも重かった。逆転でのクライマックスシリーズ(CS)進出にはこの夜を含め、残り4試合全勝が最低条件。負ければ終わりの崖っぷちに立ち、追い詰められていた。

 相手の巨人はすでに優勝を決め、どこかリラックスムードでいる。何かやりづらい。

 こんな時は指揮官の采配が物を言う。大毎(現ロッテ)、阪急(現オリックス)、近鉄3球団で8度の優勝に導いた西本幸雄が語っていた。

 「大事な試合で、監督が大事にいこうと堅い作戦を採ると、選手が硬くなる」

 つまり「選手は常に監督の姿勢を見ている」わけで、その心が選手に伝染するのだ。選手が硬い、チームの空気が重いとみれば、その心や空気を打ち破るような、思い切った策が必要となる。

 この点で、監督・矢野燿大の作戦が光った。

 1回裏無死一塁、送りバントの構えをしていた北條史也に1ボールからバスター・エンドランで仕掛け、左前打と好機を広げた。1死満塁から大山悠輔の右犠飛での先取点につなげた。

 ただし、1点止まりの「スミ1」で、まだ空気は重かった。1―0のまま迎えた6回裏、先頭・大山がファウル7本、12球粘って四球を選び無死一塁。どうしても追加点がほしい場面。送りバントもあるかと見えたが、初球ヒットエンドランを仕掛けた。打者・糸原健斗は空振りしたが、大山は二盗成功。無死二塁から右前打して2点目をもぎ取った。

 硬さが見られた選手をエンドランで動かし、ほぐしたのだ。現に、4回裏に送りバントを失敗していた糸原が追い込まれながら、外角球を右方向に引っ張り転がした打撃は本来の粘り腰だった。

 指揮官の思い切りはやはり伝染し、梅野隆太郎2ラン、福留孝介ソロにつながったとみている。

 希望の糸はつながった。27日に広島が中日に敗れることが前提だが、28日から3連勝で逆転CS切符を手にできる。

 球団史で言えば、1964(昭和39)年の優勝がある。残り7試合で3・5ゲーム差あった首位大洋(現DeNA)を逆転した。直接対決の4戦全勝を含め6連勝で決めたのだ。

 当時、現役だった吉田義男は著書『阪神タイガース』(新潮新書)で<奇跡としか言いようのない大逆転優勝>と記した。そう、奇跡は起こせるのだ。=敬称略=(編集委員)

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