高校日本代表の「日の丸外し」問題、親の立場なら……

[ 2019年8月29日 11:00 ]

<U18日本代表>釜山空港に到着した奥川(左)と佐々木(撮影・木村 揚輔)
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 【君島圭介のスポーツと人間】2004年のアテネ五輪。注目の女子マラソンのスタート時間は過ぎていた。野球日本代表の取材でアテネ郊外に滞在していたため、現地にいながら沿道の応援もできない。せめてテレビ観戦でも、とカフェに飛び込んだ。

 映りの悪いテレビ画面にはラドクリフやヌデレバら世界の強豪と先頭集団を引っ張る野口みずきがいた。粉っぽいグリーク・コーヒーを啜りながら、手に汗を握っていると画面が突然切り替わり、ボート競技の中継を始めた。今、まさに野口がスパートをしかけた25キロ付近だった。

 その後もギリシア選手が出場する跳躍競技の予選を延々流したり、マラソン中継は終わってしまったのかと思った。周囲の客はそもそも五輪中継に興味がない。市内の喧噪を避け、郊外のカフェで夏の一日をのんびり過ごしている。一人やきもきしながら苦いコーヒーを嘗めていると、突然に画面がマラソンに戻った。

 競技場に飛び込んで来たのは右胸に日の丸をつけた1メートル50の小さな、だが偉大な日本人だった。その瞬間の衝撃と喜びは忘れられない。野口が左腕を突き上げてゴールした瞬間は、自分も立ち上がってカフェ中に「日本が勝った!」と叫びたかった。同じ日本人であることが誇らしかった。

 さて、18歳以下の野球ワールドカップに出場する高校日本代表が、日の丸のロゴを付けないポロシャツで開催地の韓国に入った。それを批判する声も出ているが、引率する高野連は20人の大事な「人様の子」を預かっているのだ。安全に細心の注意を払い、無用なトラブルを回避するのは当然の配慮だと思う。彼らは野球をするために韓国に入ったのだ。

 昨今の日韓関係に緊張状態を作り出しているのは、高校日本代表の彼らではない。むしろ日本を代表して国際大会に挑むスポーツチームに政治的な感情論を押しつける周囲が大人げない。鍛え上げた精鋭だが、17、18歳の子供だ。送り出す親としては「日の丸外し」を決断した高野連の配慮が迷惑であろうはずがない。

 野口みずきの日の丸は、競技者として戦う姿と重なるから感動を生んだ。もし、レース翌日にアテネの街を歩く彼女の服に日の丸が付いてなかったら幻滅するだろうか。そんなこと誰も気にしない。

 高校日本代表だって、グラウンドでは日本人の誇りを胸に日の丸を背負って戦う。だが、韓国の空港で、街なかでまで国を背負う必要はない。彼らに過剰な緊張を強いているのは誰か。民間の、まして子供たちに「日の丸を外してまで参加すべきではない」と強硬に主張する有識者のなんと多いことか。来年の五輪・パラリンピックのホスト国として少々心配になる。(専門委員)
 

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