“観察”で触れた強打者の意識 西武・山川が大切にする“顔の角度” 巨人・坂本がこだわる“体のひねり”

[ 2019年6月14日 11:00 ]

11日の巨人戦の初回2死一塁、中前打を放つ西武・山川。この打球を中堅手が失策し、一走が本塁へ生還(撮影・木村 揚輔)
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 野球小僧だった記者の少年時代、よくプロ野球選手の打撃フォームを真似ていた。まだ地上波で野球中継があった時代。テレビの中のプロ野球選手を観察し、家の前でバットを振ったものだ。

 今でも球場に行けば、試合前の打撃練習から試合とバッターのスイングを観察するのが好きだ。選手が何をしようとしているか、どんな意識でスイングしているかに、じっと目を凝らす。ネット中継も発達。昔よりもたくさんの選手を日々、チェックできる。いまの子供たちは幸せだ。

 12日。西武―巨人戦の行われたメットライフドーム。ホームの西武の全体練習開始よりも前に、西武・山川と巨人・坂本が野球談議に花を咲かせていた。身振り手振りを交えて約15分。「“どうやって打ってんの?”って感じかな」と坂本が言えば山川は「(内容は)秘密です。技術を盗んで自分のものにするのは大事なことですから」。セ、パの本塁打トップの2人は、そうはぐらかしたが、きっと有意義な「頂上対談」だったのだろう。

 代わりに、それぞれに気になっていたことを質問してみた。まずは、山川。ちょうど前日の11日の巨人戦で、気になる仕草があったのだ。初回2死一塁。打席に向かうとまず、本塁と捕手寄りの打席の角あたりに立った。しばらくマウンドの左腕・今村に正対して、視線を送っていた。その後、打席に入ってバットを構えた姿で何となく意図が分かった。

 交流戦最初のカードの広島戦。センターからのカメラの映像を見ていて、山川の顔が昨年よりも投手に対して真正面に向いているな、とふと思った。だが、11日の打席は違った。顔が投手に正対するほどには向いていない。記憶と照らし合わせると違っていたのは相手投手の左右。「左ピッチャーとか、右ピッチャーでもプレートを一塁側で踏むとか、三塁側で踏むとか、その違いで変わります」。ボールの出どころが変われば軌道も変わる。それに対してスイングの軌道も同じではダメ。その調整のための顔の角度の違いだ。山川は「大事です。意識しています」と言った。

 一方の坂本。本塁打量産中の打撃で気になっていたのは体のひねりだ。坂本は元々、グリップを捕手方向にグッと引くスタイルだが、今季はそのグリップがより捕手、背中側に入っている印象がある。そこから、体の軸がぶれずに一気にバットを振り抜く。インパクトまでの助走が長い一方で、バットが遠回りすることもないため、パワーが効率よく伝わっているように見えていた。「本当はあんなに(グリップや右肩が背中側に)入っちゃいけないんですけどね…」。あれ?意図してそうしているんじゃなかったか…、と思ったが違った。「僕、この辺が柔らかいからね」。そう言って坂本は両肩と首のあたりをクネクネさせた。肩周りの柔軟性。自身の身体的特徴を活かし、たどり着いたスイングなのだろう。

 ユニホームを着て毎日、グラウンドに立っている選手たち。体調も変わり、トレーニングで体も変化する。いかに自分を分析して、最適なものを導き出すか。大変な作業の先に結果が出る。真似するだけじゃ打てない。そりゃそうだよな…。(記者コラム・春川英樹)

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2019年6月14日のニュース