お股ニキを直撃!阪神を大分析 総合力なら梅野が日本一

[ 2019年6月12日 08:30 ]

<神・日(2)>6回無死、右前打を放った近本(撮影・平嶋 理子)  
Photo By スポニチ

 「お股ニキ(@omatacom)」をご存じだろうか?ツイッター上で鋭い視点のもと、新しい野球の見方を提供する“プロウト(プロの素人)”評論家で著書「セイバーメトリクスの落とし穴 マネー・ボールを超える野球論」(光文社)も話題だ。ダルビッシュがその眼力を認め、複数のプロ野球選手ともひそかに交流。そんな謎深い人物に同じくツイッターで「チャリコ遠藤(@sponichi_endo)」として活動する虎番・遠藤が直撃。

 【野手編】

 ――野手では新人の近本が躍動している

 本に“赤星の後継者がなかなか出てこない”と書いたんですが、ある意味フラグ(※1)が立ったというか。赤星より長打力はあるし、守備も良いし、めちゃくちゃ良いですよ。記事とか見てると、外国人の打ち方を参考にしてるとか見ますし、FBR(※2)も意識してるのかなと。本塁打も15本ぐらい打つんじゃないかなと。
 ――打順は1番いい

 思い切っていける1番で良いと思いますね。2番に選球眼の良い糸原もいて、良い並びじゃないかなと。あとは、糸井、福留を休ませる時にバックアップできる選手の台頭があれば良いですよね。
 ――候補は中谷、江越らになる

 中谷は一塁も中堅も守れて、かなり貴重ですよね。打撃面はテークバックの時に間ができるので、差し込まれたりしてしまうのかなと見ています。彼なんかは(アストロズの)グリエルとかを参考にすれば良いんじゃないかと思いますけどね。グリエルは最初からトップを作ってスイングしているので。

 ――書籍に阪神の若手の右バッターは逆方向を意識しすぎると書かれていたが

 打球方向ってよほど器用な選手や技術・経験のある選手じゃないとそんなに意識して打てないものだと思うんですよ。大山も昨年の前半は相当、右方向を意識してましたよね。開幕戦で菅野から右方向にホームランを打った時もツイッターで“大山も良くなっているがまだお利口さんのスイングなんだよな。よくて・280、15本塁打くらいで頭打ちになる。日本特有の強引になるな、反対にも打てるのが理想だ、みたいな思考が強すぎるのがどうしても邪魔をする”とつぶやいてます(18年4月5日にツイート)。大山、梅野は昨年の後半は必要以上に意識しなくなって良くなったように見えましたけどね。大山はいずれ30本打てる力を間違いなく持ってると思います。守備も肩もめちゃくちゃ良いです。

 ――広い甲子園を本拠地にする中で目指すべき打者のタイプは

 阪神の選手は甲子園はホームラン打てないとか思い過ぎているんじゃないかなと思いますね。他球団のバッターが結構、甲子園のバックスクリーンに放り込んでいるイメージがあるので、そこまで萎縮する必要はないのかなと。ライトは難しいかもしれないですけど、右バッターは思いきり、引っ張れば良いんじゃないかなと。

 ―昨年は甲子園での勝率が悪かった

 個人的にはラッキーゾーンを作れば良いと思いますけどね。ホームランが出やすくなるし、守りやすくなる。ピッチャーは良いからそんなに打たれない。結構、戦力の構成と球場のミスマッチがあって、メッツがそうなんですよね。デグロム、シンダガード、ウィーラーらエース級を揃えながら、球場はめっちゃ広い。球場を狭めて野手に打ってもらった方が、プラスの面は多いと思うので。ソフトバンクなんかはそれで成功してますよね。

 ――甲子園と鳴尾浜でパークファクター(※3)が違うのも影響

 すごくあると思いますね。それまで鳴尾浜の実物を見たことがなかったんですが、見たら確かに、これは狭いなと。2軍の狭い球場でバンバン本塁打を打ってる打者が甲子園に来て、1軍レベルの投手から打てというのも難しいと思いますね。だから、横浜スタジアムに来たら、みんなイキイキしてますよね。あれは意識の面も結構、あるんじゃないかと思いますね。狭いな、やりやすいなと感覚的に思っていることもあるんじゃないかなと。パークファクターって数字的なものだけじゃなく、マインド的なものにも影響を与えますよね。球場によってフライ率も微妙に変わるんですよね。東京ドームとか、神宮ならこすっても入る、ミートすれば良いとか、心理的な影響もあると思いますよね。阪神の選手も甲子園のライト方向はきついなとか。

 ―梅野が捕手として独り立ちした

 総合力なら日本で梅野が一番じゃないですかね。(西武の)森か梅野か。肩がめちゃくちゃ強くて、フレーミング(※4)も良いし、ブロッキングも梅ちゃんウォール(!)があるので。打撃も3割打って、ホームランも2桁打てそうで。阪神は坂本もフレーミングがうまいですよね。日本で一番上手いかもしれない。梅野を軸にしつつ休ませる日に坂本を使って。そこに原口も復帰して、あの3枚揃えられるのはすごいですよね。はっきり言って、梅野、坂本、原口体制は強すぎます。

 ―梅ちゃんウォールの凄みは

 目につくのは、キャッチャーから見てボールが右側に逸れた時、内野手で言うところの逆シングルになるのにミットで止めてしまうところです。あれでドリスの150キロ台のワンバンを止めてしまうのは半端ないです…。動き自体が雑とか思われがちですが、瞬時にバックハンドの判断をして止めてしまうのは執念を感じますね。それで飛び出したランナーを刺したら相手のダメージも大きいです。あとは先発を操縦できれば完ぺきと思っていたので、完ぺきに近づいてます。

 ※1 フラグ ネットゲームなどで使用される用語。特定の条件が揃うことを「フラグが立つ」という。
 ※2 FER フライボールレボリューション(革命)の略語。統計上、ゴロは長打になる確率が低くフライの有効性が認知されメジャーがが取り入れた。アストロズなどはチーム全体で取り組み、成功を収めている。
 ※3 パークファクター 得点、本塁打など各球場での発生頻度の偏りを表す数値指標
 ※4 フレーミング 捕手の技術の1つでストライクゾーンとボールゾーンのギリギリに来たボールをミットを動かしたり、体を寄せるなどして審判からストライクコールを引き出す技術。

 【取材後記】ICレコーダーを見ると、録音時間は2時間を超えようとしていた。お股ニキさんには「阪神に絞って…」とお願いしながら話題は尽きず、国内からメジャーまで、幅広く話を聞かせてもらった。
 ツイッター2万人のフォロワーで分かるように、野球への深い知識と鋭い指摘は多くの共感を呼ぶ。一方で「素人が偉そうに…」と“野次”を浴びることも少なくない。ただ、上から目線にも見える日々の「つぶやき」の根底には選手へのリスペクト、そして、データ偏重の“野球眼”への悲哀が見える。
 「昨今は、データが重要視されがちですが、絶対にメンタルの部分もあるんです。それをすべて含めての結果。(ファンには)自分の目で見て判断して欲しいですね」。ちょっと主張の強い2番打者――。ファンと選手の“つなぎ役”として、つぶやき続ける。(阪神担当・遠藤 礼)  

続きを表示

2019年6月12日のニュース