巨人・原監督 ミスター超えならV奪回が見えてくる?

[ 2019年2月28日 09:30 ]

巨人の原監督
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 【宮入徹の記録の風景】 もちろん最大の任務は5年ぶりの優勝奪回だ。巨人の原辰徳監督(60)は15年以来4年ぶり3度目の采配となる。指揮官としての12シーズンで積み上げた勝利は通算947勝。今季53勝を挙げれば記念の1000勝に届く。過去に1000勝以上を記録した監督は12人。原監督は史上13人目での到達が濃厚だ。

 巨人の監督では川上哲治監督1066勝、長嶋茂雄監督1034勝と2人。原監督が今季87勝すれば長嶋監督と肩を並べる。原監督がシーズン80勝以上を記録したのは7度。これらのシーズンのうち14年(81勝=3位)を除く6シーズンで優勝しており、長嶋監督の数字がV奪回へのひとつの目安になりそうだ。

 原監督の初采配は02年の44歳シーズン。この年、新人監督ながらいきなりリーグ優勝を果たし、日本シリーズでも西武を4勝0敗で下して日本一に輝いた。その後09年(51歳)、12年(54歳)と計3度日本シリーズを制覇。40歳代、50歳代、60歳代と各年代でリーグ優勝した監督は西本幸雄監督(大毎、阪急、近鉄)、長嶋監督(巨人)、王貞治監督(巨人、ダイエー)といるが、全ての年代で日本一はいない。今季61歳を迎える原監督が史上初の偉業に挑む。

 もっとも、巨人は15年から昨年まで球団ワーストタイの4シーズン連続V逸。特に3連覇中の広島とのゲーム差は16年17・5、17年16・5、18年13・5と大きく水を開けられた。それでも原監督が前回指揮を執った07年は前年優勝した中日に23・5ゲーム差(4位)をつけられながら、優勝を果たしている。この年は日本ハムから前年MVPを獲得した小笠原道大、オリックスから谷佳知を迎え入れ打線を強化。その結果、06年のチーム打率・251(リーグ6位)が07年は・276(同1位)と改善した。特に得点圏打率は・265から・319と勝負強い打線に生まれ変わった。

 本塁打も06年は30本以上が李承(火ヘンに華)の41本だけだったのが、07年は高橋由伸35本、阿部33本、小笠原31本、李承(火ヘンに華)30本と「30発カルテット」を形成。得点は06年の552点から692点と大幅にアップした。今季も丸の加入で07年の再現を狙いたい。蛇足ながら07年は今季と同じ亥(い)年。巨人は亥年に59、71、83、07年と4度優勝。元号では公式戦が始まった昭和11年、平成元年とともに優勝し、今季は5月1日から新元号になる。さしたる根拠はないが、巨人ファンにとってうれしいデータといえそうだ。

 機動力をどう使うかも興味のひとつ。原監督が指揮を執った12シーズンでチーム盗塁数のリーグ順位は1位4度、2位6度、3、4位各1度と足を使った攻撃が目立った。08年から15年までは2、2、2、1、1、2、1、1位と常に2位以上。積極走塁が期間中5度の優勝につながった。ここ3シーズンのチーム盗塁数は16年62(リーグ4位)、17年56(4位)、18年61(5位タイ)と低迷。躍動感あふれる走塁でチームを活性化したいところだろう。幸い、今季から外野守備走塁担当として走りのスペシャリストだった鈴木尚広コーチが就任。貪欲に先の塁を狙う走塁が増えるかもしれない。

 投手陣では救援投手の立て直しが急務だ。昨年巨人のチーム防御率は3・79でリーグ1位。ただし、先発投手は3・63でリーグ1位も、救援投手は4・12で5位。チームセーブ数25、ホールド数73はいずれもリーグ最少だった。試合後半の投手起用をどうやり繰りするのか。「還暦指揮官」の円熟采配に注目したい。(敬称略)

◆宮入 徹(みやいり・とおる)1958年、東京都生まれ。同志社大卒。スポニチ入社以来、プロ野球記録担当一筋。94年から15年まで記録課長。

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