阪神 藤原オーナーに聞く(上)「何であろうが“Do one’s best”です」

[ 2019年1月13日 09:00 ]

「Do one’s best」の精神を強調した阪神・藤原オーナー(撮影・坂田 高浩)
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 阪神の藤原崇起オーナー(66=阪神電鉄会長)がスポニチ本紙の単独インタビューに応じた。就任初年度となる矢野燿大監督(50)への期待を語るとともに『Do one’s best』の精神を強調。伝統球団としてのあるべき姿や今後の球団運営など展望を語った。(取材・構成 山本浩之、吉仲 博幸、内田 雅也、森田 尚忠)

 ――オーナーに就任して約2カ月。心境、環境の変化は?

 「まだ、実感はないと言えばないですね。実際の試合が始まれば、そういうことを感じるのだと思います」

 ――矢野監督とも話をする時間もあったと思います。

 「昨年の納会で矢野監督が選手に対して5か条というのを呼びかけておられました。自分から変革を具体的に示す意気込みだと思いますが、私の思いと共通するものばかりで、本当に素晴らしいと思いました。例えば“喜怒哀楽を出せ”とおっしゃっていましたが、一つは有言実行ではないかと思います。自分の口から出して実現していくのは、どの社会でも同じ。そういうことを言う人の方が間違いなく伸びると思います。組織というのは“オレのやり方はこうだ”“オレの役割はこうだ”という中で一緒に練習して信頼感を得るのが大切で、例えば二遊間で言えば、お互いを知り尽くすまで練習してこそ、これは得られるものでしょう。そういう意味では金本前監督が体を鍛えて練習、練習でやらないとダメだと言っていましたが、矢野監督がこれを引き継いでいくのは正しいし、それをやらないと次の世代が、どういう戦いをするのかが定まって来ません。

 私も現場ばかり行ってましたから、現場で何をするのか。鉄道は安全を守る、安全を守るためには規則を守らないといけません。それでもいろんな事故が起こったり、ミスが起こったりします。ミスが起こったことに対して真摯(しんし)に向かい合って、何が悪かったかをみんなで一生懸命に考える。それを繰り返し、繰り返し、100年間やってきて、ようやく今の形ができあがっている。そういうことを築き上げて、ビジネスは成り立っていますし、野球も一緒だと思います」

 ――矢野監督の契約年数はあると思いますが、1年目からノルマはありますか?

 「ノルマはありません。発展途上であろうが、何であろうが「Do one’s best」です。これは絶対にしないといけない。そうじゃないとお客さんに理解してもらえない、ファンの望むものにはなりません」

 ――難しいですね。ファンやベテランは少し先と言うと、すぐに優勝したいとなると思います。

 「それはそうですね。目指すのは間違いなく優勝です、そうじゃないとプロではありません。ですから勝つことが第一。それは間違いない。そうでないと競争も起こらないと思います」

 ――ファンを楽しませるという部分では甲子園ではどうしても、得点が入りづらい。例えばラッキーゾーンの復活はありますか。

 「チームの現状と将来像を合わせて考える話だと思いますが、甲子園の場合は高校野球がありますから。われわれだけで、語る話ではないです」

 ――内定会見で「新しいタイガースを作っていきたい」と発言されていましたが、具体的に「新しい」という部分は何でしょうか?

 「具体的なものはまだないですが、こういうことを考えないといけないというのを二つ持ってます。これはフロント、監督が一生懸命やることですが、短期的には今いる選手をどういう風に伸ばして行く、どういう風に起用する、どういう練習をする、それがあって初めて来年のチームの方向が決まる。それをバックアップするのが私の仕事です。

 もう一つは長期的なもので、今はコンピューターの世界ですよね。この頃の車はレーンキーピングのボタンを押したら真っすぐ走ってくれます。高齢者が増える、働き手が減る、人間がやらなくても手を省く、もっと安全にやるというもので、その対極にあるのが野球ですよ。人間対人間。ちょっと手元が狂えば悪送球になったり、ミスショットになることもあります。デジタルではそんな間違いは絶対にありませんから。特に甲子園は開放型のボールパークですから、風が吹こうが、雨が降ろうがやる。高校野球はまさにそう。それを見たお客さんが感動する。対極が起こって来るときに、野球をどうやって皆さんに理解してもらうのか。そういう時代を知らない人たちに、デジタルを使って野球をわかってもらう。今回でもバックスクリーンを大きな画面にしますが、何を映すのか。デジタルで何かを解説するようなものになるのか、選手がこう考えているというのがわかるような表示ができるか。そういう工夫を考えていくようにしなければ、あの感動が伝わりにくい時代になっていくと思います。そういうことを長期的に考えながら野球の施設、野球はどういう面白さがあるのかを新たに考えていかないといけません」

 ――オーナーもおっしゃっていたように、やはり勝たないといけないと思う。

 「はい。それはもちろん、ファンの方も勝利を待っておられますからね」

 ――話は変わりまして、巨人軍は大補強しました。

 「それはチームの考え方です。対抗するには練習しかない。タイガースは練習で鍛えていきます」

(あす14日に続く)

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