先発投手の「勝利数」への意識 今後どうなる日米の“差”

[ 2018年12月26日 09:00 ]

メッツ先発のデグロム(AP)
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 日米の野球で先発投手の「勝利数」への意識に、ここまで差が生まれているとは思わなかった。

 メジャーリーグのサイ・ヤング賞、ナ・リーグはメッツのジェイコブ・デグロム投手が先発投手としては史上最少の10勝(9敗)で初受賞した。18勝(7敗)、防御率2・53のマックス・シャーザー(ナショナルズ)がいながら、全30票中、29票も1位票がデグロムに投じられた。今や球速、回転数なども分かり、セイバーメトリクスによる貢献度も様々に数値化されている。メッツのミッキー・キャラウェイ監督は「先発投手の勝利数はあまり関心はない。いかに点を与えなかったかである」と話した。

 球数制限のある大リーグでは、先発投手の完投数は多いとはいえず、味方の援護点に、勝利数が左右される確率は日本よりも高い。その点は理解しているが、そこにレイズが導入した救援投手が先発する「オープナー」という戦術も生まれ、より「先発投手の勝利数」への意識は低くなっていると感じる。

 一方で、日本はどうか。11月23日に東京都内で行われた日本プロ野球名球会総会では「勝利数の価値」が議論となった。今季、上原浩治投手が日米通算で100勝、100セーブ、100ホールドを達成。投手の入会資格も議論されたが、名球会員の中には「勝利数とセーブはもちろんのこと、ホールドは同列にはできないし、合算も難しい」との声があって、結論は先送りとなった。

 日本では先発投手に厳格な球数制限はなく、「投手の勝利」は依然として尊いものである。巨人の菅野智之投手が来年の目標に20勝を掲げた。チームの勝敗の責任を自ら背負う覚悟を示したものだと感じる。完投を目指す中では、ギアチェンジや、打者との駆け引きが生まれる。もし、先発投手が勝利に価値を見いださなくなったら…と考えると寂しく感じるのは、日本で育った記者の古い考えだろうか。

 来季は、1軍登録枠が28人から29人となる。ベンチ枠25人は変わらないとはいえ、登録抹消せずに使える選手が1人増える。日本ハムの栗山英樹監督はオープナー導入の可能性も示している。

 野球は常に進化している。新たな戦術や起用法は話題を呼ぶだろう。見る側にも、変化を受け入れる覚悟が求められる2019年となるかもしれない。(記者コラム・倉橋 憲史)

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2018年12月26日のニュース