一筋縄でいかぬ契約更改の攻防、記事にできないものもあるその“中身”

[ 2018年12月25日 08:30 ]

契約更改交渉に臨み、1億1000万円でサイン、笑顔で会見する西武・山川
Photo By スポニチ

 メリークリスマス!お子さんをはじめ、25日はプレゼントを手に笑顔で1日をスタートした人も多いだろう。クリスマスツリーが役目を終えれば、門松の出番。また1年が終わり、新年はすぐそこまで迫っている。

 野球選手の1年の締めくくりは契約更改。その年の仕事ぶりを「年俸」という数字で評価される。交渉後の会見はまさに悲喜こもごもだ。担当球団の西武は25日、オーストラリアのウインターリーグに参加した斎藤大、高木勇の2人の交渉で全選手の更改が終了する。球団によるのだろうが今季の西武は、1軍メンバーはほぼ全員、下交渉を経て正式な交渉に臨んだ。ある選手は下交渉で提示された金額よりも、当日の最終的な提示でアップ額が2倍ほどになり笑いが止まらなかった。だが、単純に下交渉よりも条件がよくなれば選手は満足かと言えば、そうではないケースもある。

 例えば今季の西武は下交渉と正式交渉の間に、炭谷、浅村のFA移籍決定という大きな動きがあった。選手からすればその前後で条件が変わる、という状況を「“FA選手が先で俺たちはそのあとか”と感じてしまう。最初の提示と後からの提示の違いを素直に喜べない」と感じる選手もいる。

 また、交渉事なのですべてをメディアにはオープンにできない。そのため、交渉の詳細な経緯、やりとりを伏せたまま、最終結果だけで会見や取材対応を行わなければならくなる場合も多い。細かい事実を語れないまま報道されてしまうケースも少なくない。選手がわがままを言ったような印象で終わっているが、実は選手が困惑するような条件を、球団側が持ちかけていたりすることもあるのだ。

 契約年数、年俸の金額。契約更改で最終的に注目される条件は数字上ははっきりしているが、交渉のテーブルを挟んだ攻防はやはり一筋縄にはいかない。交渉後の選手の表情、言葉の端々に表れる感情をくみ取り、後日、本音に迫ると、意外なやりとりを聞き出すことができる場合もある。ただ、球団、選手どちらの立場にしても、交渉の中身は一方的に明らかにすれば信頼関係はなくなるので、記事にはできないものである。

 「3倍増」「複数年契約」「単年勝負」…。その裏で繰り広げられる攻防。悲しいかな、我々には契約更改の場すらないけれど…。みなさん、ぜひともよいお年を。(記者コラム・春川 英樹)

続きを表示

2018年12月25日のニュース