時には夢の中でもマウンドに…オリ移籍の竹安、新天地での飛躍願う

[ 2018年12月22日 18:00 ]

オリックスへの移籍が決まった竹安
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 人的補償でオリックスへの移籍が決まった阪神の竹安は、文字通り“24時間”野球の事を考えている男だ。社会人時代に右肘のトミージョン手術を受けた影響で、阪神入団後、特に1年目は満足に投げられない時間が長かった。制御していた「投げたい」思いは、夢の中で爆発していた。

 「夢でマウンドに立っているんです。相手が中学生の日もあればメジャーリーガーの日もあって。変な夢なんですけど、良い感覚で投げられた時に目が覚めるんです」

 わずかに残る感覚を忘れないため、夜中の3時にペンを走らせた事は1度や2度じゃない。食事の席でもそうだった。野球以外の話をしている姿はほとんど見た覚えがない。「もう少し体を上手く使えれば…」とジェスチャーを交えながら技術的な悩みを打ち明けていた姿が、記憶に深く刻まれている。

 そんな竹安の口調、表情が、今春キャンプ前にはグッと明るくなっていた。「最初の2年はマウンドで“ちゃんと投げられるかな”と考えていて、自分と戦っていたんです。でも、今年は違いますよ」。球速は140キロ台後半を計測するようになり、患部の状態と共に投球の感覚が格段に良くなっていた。

 迎えた3年目、ウエスタン・リーグで14試合34回2/3を投げて6勝0敗、防御率1・30と安定した成績を残して今季最終戦だった10月13日の中日戦で先発デビュー。5回5安打2失点とゲームメイクし、来季へ確かな手応えを感じ取っていた。秋季キャンプの実戦でも好投。矢野監督からは「(先発ローテに)入っていける可能性のあるピッチャーやと思っている」と期待をかけられていた。

 野球人生において、来季は間違いなく勝負の年だ。「来年こそ」の思いを胸に準備していた矢先の移籍には、本人にしか分からない複雑な思いがあるだろう。それを承知の上で他人の私が言わせてもらうが、人的補償とは、チームで29番目に必要な選手と言い換えることができる。

 オリックスの長村球団本部長は獲得に至った経緯について、「将来的にも素晴らしいピッチャーで、戦力に加わってくれるだろう」と明かしている。前述したウエスタン・リーグの成績のうち、対オリックス戦は5試合13回2/3を投げて1点も取られていない。評価が本心であることは言うまでもないだろう。

 「タイガースには本当に恩があるので離れるのは正直寂しいですが、しっかり気持ちを整理して、切り替えて、来季からオリックスの一員として、ファンを喜ばせられるようなピッチャーになりたいと思います」

 突然訪れた環境の変化を乗り越えて、マウンドで躍動する姿が見られることを、切に願っている。(巻木 周平)

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2018年12月22日のニュース