eBASEBALL“最強二刀流”に本紙記者が挑戦 パワプロ・プロリーグ選手の実力は?

[ 2018年12月19日 09:02 ]

プロプレーヤーの「なたでここ」さん(左)と対戦し本塁打を浴びる本紙・後藤茂樹記者(撮影・沢田 明徳)
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 eスポーツ元年と呼ばれる今年の年末にかけ、各種競技が盛り上がりを見せている。今年発足した「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ」は、来年1月12日のe日本シリーズ(TFTホール500、東京都江東区)進出チームが決まった。たかがテレビゲームなのか、されどプロアスリートか。eペナントレースのパ・リーグで打撃3冠などタイトルを総なめにした西武・なたでここ選手(21)に、本紙野球担当記者が挑戦。実力に迫った。

 社会人になり腕はさび付いたが、学生時代は94年発売の初代パワプロに没頭した。小学4年の息子にはまだ負けない。勝てないまでも一矢報いられればの思いで勝負に挑んだ。

 ゲーム設定は、初心者向けから上級者まで幅広いのが当作の売りだが、真剣勝負のためパワプロ・プロリーグ公式設定を指定。ここが大きな障害となる。

 初回あえなく3者凡退に抑えられた。その裏、王者の打棒におののいた。先頭外崎の二塁打から、1死も奪えず5失点。簡単な設定なら1度で済む投球動作の2度押しに戸惑い、狙う位置も表示しない設定のためストライクを投げるのにも苦しんだ。ボール先行となり甘く置きにいくと、確実に捉えられた。

 2回の攻撃で打者6人目にしてロペスがようやく初安打。これが数少ない「一矢」だった。その裏、なんとか2死を奪い一、三塁。中村もポップフライに打ち取った。この回無失点がよぎった直後にまさかの失態。打球の落下点が表示されない設定で、前に出た中堅手が万歳。2点三塁打となり、結局この回5失点。まさに草野球に参加したお父さんが、外野守備で大失態を犯した心境だった。

 「パワプロ、難しいですね」。対戦を終えて出た率直な感想だった。初心者ではままならない難しい設定上で、彼らは涼しい顔で熟練の技術を発揮していく。何度やり直しても超えられない技術の圧倒的な差を痛感した。

 「パワプロはメンタルがとても大事。ここ一番の集中力が自分の強みだと思います」。なたでここ選手はそう分析する。現在大学3年生。本格的に練習に取り組んだのは昨年からという。練習は一日平均2、3時間ぐらいで、多くて5、6時間。マイコントローラーを持参し、モニターはテレビからゲーム専用に直前で取り換えてもらった。テレビではコンマ数秒の遅延が生じるためで「それが感覚のズレにもつながってしまう」。モニターの高さも定位置へ数センチ単位で丁寧に動かした。

 eスポーツ選手となり、「SNSのフォロワーが増え、連絡取っていない知人からも声が掛かったり」と生活にも変化が。研修会での元ヤクルト・岩村明憲氏の言葉が胸に刻まれているという。「“1円でももらったらプロ”と。お金をもらってするプロ意識は大事にしています」。素人記者の挑戦に快く胸を貸し、全力で技術を発揮する姿勢はプロそのものだった。 (後藤 茂樹)

 ≪若者ファン拡大へ NPB側も手応え≫コナミデジタルエンタテインメントと大会を共催する、日本野球機構(NPB)の高田浩一郎経営企画室長は「プロ野球ファンを増やしたいという狙いにおいて、化学反応が起きている」と話した。ネット配信の視聴者数は、開幕戦で75万を超え、プレーヤーを応援するファンも増えている。今季のプロ野球の観客動員は過去最多だったが、30歳以下が少ないと分析する。「eスポーツに集まる、若い人が野球に興味を持ってくれれば」と期待し、来年の大会開催についても「前向きに考えていきたい」とした。

 ○…「パワプロ」とは94年から発売されるゲームソフト「実況パワフルプロ野球」の略。12球団の選手が実際のデータで登場し、プレーヤーはオーダーや交代選手を選択しながら一投一打をコントローラーで操作する。オンライン対戦も可能だ。プロリーグでは最新版を使用し、12球団36選手が腕を競う。7〜8月のプロテスト(オンライン予選)に7623人が参加。選考会を経て9月29日のeドラフト会議で各球団3選手が指名された。11月10日に開幕したeペナントレースは1チーム15試合。プロ野球のCS同様にリーグ3位以上がeリーグ代表決定戦に進み、e日本シリーズで締めくくる。選手にはプロとして、プロモーション協力費の名目で報酬が支払われる。試合出場費が1日1万円。日本一になればチーム3人で531万円(1人当たり177万円)を手にできる。ゲーム操作を担当した試合の結果を累計して争う個人タイトルにも報酬が出る。

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