JABA清野会長、地域密着でつなぐ社会人野球の未来 ファン拡大へ「ネット中継充実図る」

[ 2018年12月12日 08:41 ]

座右の銘「挑」を手に笑顔の清野会長
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 社会人野球を統括する日本野球連盟(JABA)は来年、創立70周年を迎える。今年5月に就任した清野智会長(71)がスポニチ本紙のインタビューに応じ、「地域密着」に取り組んでいる社会人野球の現在と未来について語った。(聞き手・松井 いつき)

 ――会長就任後、今の思いは。

 「これまで歴代会長が育て、培ってきた伝統を、どう次の世代につなげていくかというのが一番大切だと考えています。明治初期に、国鉄の技師が米国から帰国して、野球チームを組織してから100年以上の歴史があります。そういった歴史の積み重ねがある中で、単に社会人野球としてだけではなく、野球界全体の中で、責任を果たしていきたいと思います」

 ――夏の都市対抗の感想は。

 「決勝戦は多くのお客さまに観戦していただき、スタンドが両チームのカラーで色分けされた光景が印象的でした。会社の応援だけでなく、チームの地域の方々や社会人野球のファンの方々も来られていて、一日の試合をすべて観戦する方もいらっしゃいます。遠方から応援に駆けつけてくださる方もいます。都市対抗は、それぞれ地元を代表しての“都市の対抗”であり、応援も地域色の出たものが多くあります。私もそうですが、野球ファンや地域の皆さんにとっても一つの夏の風物詩として欠かせないイベントだと思います。応援しているチームが負けると、“ああ、夏が終わっちゃったな”と思ってしまいますね」

 ――ファン拡大へJABAの取り組みについて。

 「都市対抗、日本選手権ではインターネット中継を行っています。もちろん良いプレー、試合をすることが第一ですが、ネット中継をPRし、それをきっかけにして球場で観戦していただけるように考えています。一度ライブで観戦していただくと、ファンになっていただく方が多いんですよ。そのためにも、ネット中継を継続しながら、内容の充実も図っていければと思います」

 ――会長自身の野球の思い出は。

 「父が国鉄の仙台鉄道管理局におり、主に駅で仕事をしていました。路地裏でよくキャッチボールをしました。小学生の頃は、今の楽天の球場に父に連れられ、仙鉄を応援しました。選手と握手した記憶があります。今でも、社会人はもちろん、プロ野球を見に球場に足を運びます」

 ――会長として、今後につなぐべきことは何か。

 「企業チームの数は減ってきていますが新規に加盟したチームもあります。クラブチーム登録でも企業チームと同じように活動したり、地域がバックアップしてくれているところもあります。それぞれの企業・チームで、地域とどのように連携して活動するか、いろいろと努力してくださっています。連盟も一緒になって取り組むべく各チームにお願いしています」

 ――具体的には。

 「どのように野球人口を増やしていくかということに力を入れています。都市対抗期間中に東京ドームでも開催していますが、小さなお子さんにティーボールの体験をしてもらっています。各チームにもお願いして、地域の幼稚園などと一緒になってティーボール教室を開催してもらっています。そうした地域に密着した活動をどう促していくかが大きな役割だと考えています。地域の皆さんに支えていただいていることに感謝しつつ、自分たちにできることを積極的にやっていく、社会人野球らしい役割を果たしていきたいと思います。それによって、小さな子供たちにも野球に慣れ親しんでもらうことができますし、選手たちも楽しみながら自分たちの役割を果たすことで、結果として所属するチームや企業にも貢献することができます」

 ――社会人野球の未来はどうなっていくのか。

 「社会人野球は地域と一緒になって進んでいくことが大切です。チームが強ければそれでいいというものではないと思います。それぞれの地域で活動し、応援してもらいながら、その成果として東京ドームに出てきてほしい。社員と同じように仕事しているわけじゃない、というご批判もあるかもしれませんが、一緒に仕事をしている人が、“あの選手は同じ職場なんだよ”と言って応援してくれる。選手は職場でバックアップしてくれる方々に感謝しつつ、試合で、プレーで結果を出すべく、日々の練習に取り組む。それが社会人野球のチームを持っている企業の望ましい姿だと思っています」

 ≪震災の経験糧に≫清野会長は11年の東日本大震災当時、JR東日本の社長を務め、設備復旧の陣頭指揮を執った。「一番にやらなければいけなかったのは、新幹線を筆頭に(鉄道を)元の姿に戻すということだった」という。震災発生から50日目で、東北新幹線を全線再開させ「お客さまが“ありがとう、ご苦労さん”と言ってくださったことに現場の若い社員は感激していた。これが使命なんだと再認識した」と振り返る。地域のために奮闘する姿を社会人野球の目指す場所に重ね合わせている。

 ≪愛犬との散歩が日課≫清野会長は、3月にJR東日本の取締役を退任した後も、日本野球連盟会長のほか国際観光振興機構理事長を務め、多忙な毎日を送っている。日々の健康維持のために愛犬の柴犬と毎朝1時間散歩するのが日課。愛犬の話題になると「僕が起きると、犬もウロウロしだすんです。散歩に行くのが分かっているんでしょうね」と目尻を下げていた。

 ◆清野 智(せいの・さとし)1947年(昭22)9月30日生まれ、宮城県出身の71歳。仙台一、東北大法学部を経て70年に旧国鉄入社。87年の国鉄分割・民営化でJR東日本に入社し、06年に社長、12年会長就任。18年4月から同社顧問、国際観光振興機構理事長。同5月に日本野球連盟会長に就任。

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