新人王投票の裏側 3つの“ハンデ”覆した大谷の二刀流

[ 2018年11月14日 09:07 ]

水原通訳(右)と今季のア・リーグ新人王選出を喜ぶ大谷(Angels Baseball提供)
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 【スポニチ本紙・奥田秀樹通信員が語る新人王投票の裏側】エンゼルス・大谷の二刀流は新人王獲得への3つの「ハンデ」をものともしなかった。

 第一は日本球界で実績を残した選手に付きまとう「新人扱い」への異論。03年に4点差で受賞を逃した松井秀喜(ヤンキース)は、新人ではないとして3位までに投じない記者が2人いた。そのうちの一人は「もし私が今年、投票権を持っていても大谷には投票しなかった」と言い切る。

 2つ目は、シーズンを通して活躍できなかったこと。3つ目はチームの成績が振るわなかったことで、プレーオフに進出したヤンキース勢の2人が評価された部分だ。

 インパクトのある活躍とともに見逃せないのは、大谷のパフォーマンスは、近年流行のデータ解析システム「スタットキャスト」により、さらに映えたこと。投げても100マイル(約161キロ)を超え、打球速度も100マイル超え。走塁スピードも平均以上をマークし、走攻守で互角以上に渡り合った。大リーグで選手評価の基準となっている勝利貢献度数「WAR」でも大谷は投打合計で3・9を記録し、トーレスの2・9、アンドゥハーの2・2を上回った。

 選手の役割の分業化も進む中、100年前のベーブ・ルース以来という二刀流は、時代も流行も超越した。数値で示された実力と、その希少性に米国人記者は共感を覚えた。

 キャリアの途中で二刀流に挑むメジャーリーガーも出現した。大谷がエース兼主軸としての可能性を、世界最高峰のメジャーリーグで示した意義も大きい。打撃成績重視による従来の評価基準を変えさせるだけのインパクトがあった。(全米野球記者協会会員)

 ▽大リーグ新人王投票 全米野球記者協会(BBWAA)の会員のうち、30球団の本拠地から選ばれたア、ナ両リーグの各30人がレギュラーシーズン終了時に投票する。日本と異なり、BBWAAの公式サイトで誰に投票したかが公表される。3人連記で、1位(5点)2位(3点)3位(1点)の合計点で決める。1947年に制定され、同年に黒人初の大リーガーとなったジャッキー・ロビンソンが受賞。デビュー40周年の87年には「ジャッキー・ロビンソン賞」と命名された。

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