【高橋由伸という男】引退早め監督受諾「結果出なかったら…」覚悟の上の決断

[ 2018年10月4日 08:30 ]

巨人の高橋由伸監督
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 忸怩(じくじ)たる思いで辞任を申し出たのだろう。夏場以降、眉間のしわが深くなり、やつれていくさまが見て取れた。試合前のベンチで私と会えばジョークの一つも交わしてきたが、9月以降は肩を叩くだけだった。

 15年オフ、専任コーチ経験のないまま監督に就任した。慎重な性格の男が大役を引き受けたのだ。きっと勝算はあったはず。「マスコミとか大変だろ」との質問に「誰かがやらないと」と割り切っていたが、戦力を冷静に把握する時間は少なかった。

 94年の慶大入学時から取材してきた。2学年上の高木大成氏(元西武)を手本に東京六大学の本塁打記録を樹立。98年巨人入団後は打点王2度の広沢克実氏がライバルだったが、キャンプ初日でのフリー打撃と外野守備で勝負はついた。その後は松井秀喜氏(ヤ軍GM特別アドバイザー)と切磋琢磨(せっさたくま)。松井氏のヤ軍入り後は小久保裕紀氏(前侍ジャパン監督)らとBクラスに低迷したチームを支えた。ただ人望の厚さに加え、ずぬけた技術の持ち主ながらタイトルを目前にするとフェンス激突→長期離脱するなど、球運はなかった。それでも「なぜいつも全力プレーなの?」と意地悪な質問には「チームのためです」と即答していた。

 現役引退を早めての監督受諾から、志半ばでの退任。周囲は「損な役回り」と思うだろうが「結果が出なかったら考えます」と話していたように、本人は覚悟の決断だった。 (専門委員・伊藤 幸男)

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