男気溢れる「ジィジ」矢野、古巣巨人ベンチに「あいさつに行けない」理由

[ 2018年9月28日 10:47 ]

日本ハム・矢野、今季限りで現役引退

2015年8月8日、楽天戦後のお立ち台で絶叫する日本ハムの矢野(左)と大谷
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 【矢野謙次という男】矢野は日本ハム移籍後も底抜けの明るさと熱いハートでナインから愛された。若手からの人望も厚く、西川からは親しみを込めて「ジィジ」と呼ばれ、その熱さゆえ、時には涙を流しながら相談する後輩もいた。「イップス」に悩む球団スタッフのキャッチボールに付き合うことさえあった。大谷(現エンゼルス)も慕っていた一人だ。「(代打で)たとえ振れる準備ができなくても、気持ち(の準備)だけでも違う。ピリピリしている雰囲気がない。矢野さんを見て勉強になった」。重圧のかかる場面でも普段通りの力を発揮する極意を授けた。

 試合前に他球団の選手と談笑する姿は今では当たり前だが、矢野は極力、避けてきた。それは古巣・巨人戦でもそうだった。「由伸さん(高橋監督)や阿部さんには事前に“あいさつには行けません”と連絡を入れている」。グラウンドは一球一打を懸けた真剣勝負の場。笑顔であいさつを交わす仲間たちを見て注意こそしなかったが、「(事前にあいさつをすれば)情も入る。“内角高め”に来て本気で立ち向かえるのか」とさえ言った。男気溢れるバットマンだった。

 矢野は巨人時代に同僚だった小久保裕紀氏(前侍ジャパン監督)から「30歳を過ぎたら休みの日に体を動かさないと次の日、きついんよ」と言われたことを鮮明に覚えている。国学院大時の恩師・竹田利秋氏(現総監督)からも「朝に軽く体を動かして、その後は休め」と言われていた。だから、シーズン中は休日でも必ず体を動かし、準備を怠らなかった。北海道に本拠地を置く日本ハムは他球団に比べ飛行機移動を伴う移動が多い。「飛行機で気圧が変わるから動きたいというのもある。体が楽になる」。現役終盤は特に古傷の右膝の痛みとの戦いだった。

 プライベートで何度かキャッチボールをさせてもらったことがあるが、「“体を開くな”と教えられてきたからクロスステップになっている。若い時より体の切れがないから、それを修正できない」と解説された。原因まではっきりと指摘されたのは初めてだったから驚いた。「いいかげんにやれ。一生懸命やるな。力むと体が硬くなる」と助言をもらい、その通りに投げると自然と球威が増した。肩の力を抜く大事さを知った。

 LINEで現役引退の報告を受け「驚きました」と返すと「薄々感じてたろーが。俺にうそは言うな」と返事が来た。報道陣相手でも建前は言わず、常に本音でぶつかってきた矢野らしい言葉に自らを恥じた。「おまえは仲間だ。だから対等だ。俺が間違ったことをしていたら言ってくれ」と言われたことがある。対等と思うことは今後もないだろうが、涙が出るほどうれしかった。第2の人生も変わらず応援したい。(14〜17年日本ハム担当・柳原 直之)

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