鵡川高ナイン 地震に負けない!寮、グラウンドに被害も…希望の全力疾走

[ 2018年9月15日 07:30 ]

秋季北海道高校野球大会室蘭支部Bブロック2回戦   鵡川2―6苫小牧工 ( 2018年9月14日    とましんスタジアム )

<鵡川・苫小牧工>敗戦後、スタンドにあいさつする鵡川ナイン
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 6日未明の北海道胆振東部地震で震度6強に見舞われたむかわ町にある鵡川高校が14日、秋季北海道高校野球大会の室蘭支部予選に出場した。野球部寮とグラウンドが大きな被害を受け、12日から練習を再開。苫小牧工に2―6で逆転負けし初戦敗退となったが、ナインへは力強いエールがスタンドから送られた。

 最後まで伝統の全力疾走を貫いた。6回を除いて毎回走者を出し、相手を上回る12安打を放ったが届かなかった。OBで02年センバツ初出場時のエースだった鬼海将一監督(34)は「勝って町にエネルギーを与えられたらよかったが…」と語った。

 人口8300人のむかわ町は震度6強を観測し、センバツ3度出場を誇る野球部の寮とグラウンドは甚大な被害を受けた。寮内の大型テレビなどは倒れ、電気、水道、ガスのライフラインが全て止まった。寮の周囲は1メートルほど陥没。グラウンドの防球ネットも倒壊した。寮生は帰省し、町職員の鬼海監督は町内の避難所で寝泊まりしている。

 「避難所生活をしている人がいる中、野球ができている。勝って元気づけたかった」。内海陸主将(2年)は悔しさを口にした。人口8300人の小さな町の野球部は、町民に愛されてきた存在だ。先が全く見えない中、多くの支援が力になった。部員は12日に集合し練習を再開。ベンチ上には父母会関係者を通じて前日届いた長さ3・6メートルの「がんばろう!鵡川!!」の横断幕が掲げられた。この日朝7時前の震度3など余震が続く。今なお多くの人が身を寄せる避難所でユニホームに着替えたという鬼海監督は「複雑な心境だったが、子供たちがやりたい野球ができる。それをサポートするのが自分の使命」とベンチ中央に立ち続けた。

 支援への感謝を込め、15日には部員の申し出で町内の避難所引っ越しのボランティア活動を行う。「今日(の試合で)勝てなかった分、次は頑張りたい」と内海主将。平常の生活に戻るのはまだ先だが、町と一緒に歩き続ける。 (竹内 敦子)

 ▽鵡川高校 1952年(昭27)創立の道立高校。全校生徒153人(男子105人、女子48人)。03年度から鵡川中との中高一貫教育を導入。野球部は88年創部、甲子園は春3度出場(02、04、09年)。

 ≪OBや父母も声援≫スタンドでは町に群生するタンポポにちなんだ黄色のTシャツとメガホンを手にした関係者が声援を送った。昨夏エースの半田佳希さん(札幌大1年)は地震直後の9日に野球部の同期ら7人で野球部寮の片付けに出向いた。「寮が大変なことになって、やらずにはいられなかった。伝統の全力疾走は心を動かします」と感慨深げ。父母会の佐々木悠人会長(42)も「選手はどうなるのか不安だったと思うが、寮の復旧をしてくれた方々に感謝したい」と話した。

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