野球の言魂(コトダマ) 巨人・川相昌弘2軍監督編

[ 2018年9月15日 09:00 ]

13日仙台のファンにあいさつをする川相2軍監督(右端)ら巨人の選手たち(撮影・篠原岳夫)
Photo By スポニチ

 【君島圭介のスポーツと人間】そこには理想の野球があった。

 「野球の内容が上がった。それが収穫ですね」

 イースタン・リーグ4連覇を目前に控えた巨人2軍の試合が9月13日、宮城・森林どり泉球場で開催された。相手は楽天2軍だ。

 先発は2年目右腕の高田、スタメンには新入団の1年目・北村、若林、岸田の3人を始め、遠征ということもあってか、3年目以内の選手が6人も名を連ねていた。

 試合は初回から動いた。北林と若林の連続適時打で3点を先制。相手守備のわずかなミスからチャンスを広げての攻撃だった。

 4回は岸田の中前2点適時打で加点。なお1死一、三塁で相手投手のワンバウンド投球を捕手が前に弾くと、三塁走者の岸田が好スタートを切って本塁を奪った。

 守備では3つの併殺を記録。4度企図した盗塁では2度失敗し、けん制死も1度あったが、その果敢さは川相の指導が浸透している証だった。

 川相が現役だった頃の巨人は「巨大戦力」と称され、2軍戦の出場メンバーの総年俸が他球団の1軍以上という皮肉も生まれた。

 4番打者が集まった巨大戦力の中で川相の存在は異質だったが、その堅実で頭脳的なプレーは常にチームに必要とされていた。言い替えれば川相がいたから、巨大戦力も動いたのだ。

 いいチームを作り上げた。2軍を称えるのに適した表現ではないが、川相は「いいチーム…。そうだね。それがいつか1軍の戦力になるんだから」と頬を緩めた。

 「投手を中心にしっかり守る。攻撃は先を狙う走塁を徹底してバッティングに絡める」

 それが川相の目指す野球であり、若い選手たちに教え込んだ哲学だ。「野球の内容が上がった」という言葉は、それが浸透した手応えであり「収穫」だった。 

 彼ら川相門下生が1軍のグラウンドに散らばったとき、きっと巨人の野球は変る。(専門委員)

 ◇君島 圭介(きみしま・けいすけ)1968年6月29日、福島県生まれ。プロ野球やJリーグのほか、甲子園、サッカー選手権、花園ラグビーなど高校スポーツの取材経験も多い。現在はプロ野球遊軍記者。

続きを表示

2018年9月15日のニュース