山口貴が明かす済美の細かな取り組み…三塁コーチは腕回さず 対戦相手思いやる“好プレー”も

[ 2018年8月12日 18:43 ]

第100回全国高校野球選手権記念大会第8日・2回戦   済美13―11星稜 ( 2018年8月12日    甲子園 )

<済美・星稜>試合に勝利し、校歌を歌う済美ナイン(撮影・近藤 大暉)
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 済美のランナーコーチは腕を回さない。8点の猛攻で6点差をひっくり返した8回裏の攻撃。二塁走者が1打で本塁に突っ込む場面が3度あったが、三塁コーチの山口貴也は1度も手を回さなかった。“司令塔”の指示がないように見えても、走者はスピードを緩めることなく、ホームベースを目指した。山口貴が種明かしをした。

 「後ろで手を組んでいたらゴーで、腕を出していたらストップです」。そう言って、腰の後ろで手を組み、その後に腰の横で手を広げるポーズをした。

 「済美は伝統として腕を回さないです。理由は聞いたことがありません。入学した時はビックリしました。新チームになってから変えることもできたのですが、みんながこれの方が分かりやすいというので」

 グルグル腕を回した後に、急にストップがかかる場面はよくある。走者は減速できずにオーバーランしてアウトになったり、当たりによっては「ゴーか、ストップか」と迷いながら三塁に来る走者もいる。そうした曖昧さを少しでもなくす狙いがあると見られる。

 山口貴にはもう一つ、目に止まる動きがあった。8回、矢野の強烈な打球が星稜投手の足を直撃した。プレーが止まったところで、すぐに携帯していたコールドスプレーを持って、投手に駆け寄った。相手ベンチよりも動きが速かった。この時点ではまだ6点差で負けていた。敗戦濃厚の空気を感じさせない、勝敗を度外視した対戦相手を思いやる好プレーだった。

 「自分は学生コーチもしています。周りを見て、誰よりも先に動くことを心がけています。新チームから“凡事徹底日本一”を心がけています」

 タイブレークに入ってからの劇的なサヨナラ満塁弾で幕を閉じた死闘。乱打戦の中で、済美の細かな取り組みが表れていた。

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