八戸学院光星 中村 2日前に亡くなった仲間に届け 魂の救援と執念の一打

[ 2018年8月12日 05:30 ]

第100回全国高校野球選手権記念大会第7日1回戦   八戸学院光星9―8明石商 ( 2018年8月11日    甲子園 )

<明石商・八戸光星学院>10回2死、明石商・田渕を遊ゴロに仕留めてガッツポーズをする八戸光星学院・中村(撮影・坂田 高浩)
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 銀傘も。浜風も。緑の芝生も。そして耳をつんざくような大声援も。甲子園にいることができなかった後輩のために勝った。八戸学院光星・中村は言った。

 「あいつのためにも勝たなければなりませんでした。可愛い後輩でした。“おまえのために勝ったぞ”と言いたいです」。2日前。2年生投手が脳腫瘍のために亡くなった。悲報がナインに伝えられたのは前日だった。

 最大6点差を追いつかれた同点の8回から登板した。四死球こそ与えたが安打は許さない。そして延長10回2死一、二塁でスライダーを左前に運ぶ。左翼手が打球の処理を誤る間に二塁走者が生還。中村はその裏を万感の思いで3人で抑えた。

 亡くなった2年生投手が入院したのは昨年秋。手術が不可能な部位に腫瘍があった。ナインと彼が最後に会ったのは今年3月。埼玉・花咲徳栄との練習試合の際、病院から車いすでチームメートに会いに来てくれた。中村が掛けた最後の言葉は「俺も頑張るから、おまえも闘病生活頑張れよ」だった。同じ投手。練習メニューをともにしていた。しかし、その彼はもういない。

(涙こらえ /「全員の力」/) 試合後。仲井宗基監督の目には涙が浮かんでいる。「彼に見てもらうためにも絶対に勝とう、と選手には言いました。全員の力で勝てた。(亡くなった選手も)喜んでくれていると思います」

 16年8月14日、2回戦の東邦戦。最大7点のリードを奪いながら9回に5点を失い、サヨナラ負けを喫した。東邦を後押しする異様な雰囲気。大歓声に押しつぶされた。この日も大量リードを追いつかれ、悪夢の再現をも思わせた。しかし、それが繰り返されることはなく、同校夏20勝が記録された。

 強くなった。自分たちの力で。強くしてくれた。亡くなった彼の存在が。彼とともに過ごす長い夏が始まった。 (田村 智雄)

 ○…4番・東が初回に右翼席へ先制2ラン、先頭の5回にも左越えソロと同校では12年北條(阪神)以来の1試合2発をマーク。「めちゃうれしい。1本目は打った球も分かりません」。大会前は高校通算8本塁打だったが、聖地で2桁に乗せた。OBの期待も大きい。巨人・坂本勇からは、右袖にオリジナルロゴ刺しゅう入りのTシャツが差し入れされた。開会式直後にはチーム宿舎に北條が訪れ、激励を受けた。亡くなった2年生投手の思い出には「打撃投手としてよく投げてくれた。勝てて良かった」としんみりしていた。

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