【東東京】都小山台 69年ぶり決勝進出 初の夏制覇へ 完投の戸谷「新しい歴史をみんなとつくりたい」

[ 2018年7月28日 05:30 ]

第100回全国高校野球選手権記念東東京大会準決勝   都小山台7―2帝京 ( 2018年7月27日    神宮 )

<帝京・小山台>帝京を撃破し、スタンドに喜びを爆発させる小山台ナイン(撮影・近藤 大暉)
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 都立高が甲子園に王手――。第100回全国高校野球選手権記念大会(8月5日から17日間、甲子園)の東東京大会準決勝が27日に行われ、都小山台が帝京に7―2で快勝。21世紀枠でのセンバツ出場1度しかない進学校が、全国18位の甲子園51勝の強豪を撃破した。初優勝をかけた決勝はあす29日、神宮で午前10時開始。昨夏代表・二松学舎大付と戦う。都立高が夏の聖地を踏めば03年の都雪谷以来となる。

(練習場内野だけ/平日最高2時間/) 帝京・トランの捕邪飛を吉田ががっちりつかんだ。27個目のアウト。福嶋正信監督は「正直、接戦か大敗かと思っていた」と目を丸くした。予想になかった大勝。週2で行う河川敷練習を除けば、グラウンドは内野までしか取れない。校則のため、平日の午後練習は最高2時間で、朝練習も週3日しか行えない。そんな都立高が、49年以来69年ぶりのファイナル進出だ。

 憧れで集まったナイン。都小山台がセンバツに出場した14年、現在の3年生は中学2年に上がる前で、野球も勉強も“できる”高校はまぶしく映った。エース戸谷もその一人。偏差値69と学力も必要だったが、必死の勉強で入学を果たした。

 9安打2失点完投。強豪を109球でねじ伏せたヒーローは「低めの真っすぐとスライダーが良かった」と喜び、「スライダーは憧れの先輩に教わった球種」と明かした。伝授したのは14年のエース。中大4年の伊藤優輔だった。伊藤は「私立の強豪のように野球を教えてくれるOBが多くない。自分の甲子園の経験を少しでも還元できれば」と暇を見つけては母校に足を運ぶ。この日も、スタンドから見守っていた。

 「14年組」のDNAがチームに息づく。学生コーチの小野空朗は中大3年。「あの時はスタンド応援で何もできなかった。センバツで見てきたことを教えてあげられれば」と力を添える。正捕手・吉田は、伊藤とバッテリーを組んだ兄の龍平(早大3年)から前日26日、帝京戦のビデオに基づいたリードの助言を受けた。打っても4、5回に連続適時打。「相手は帝京。自分は都立の8番打者。気楽に打ったら点が入って驚いた」と笑った。

 4年前。夏の終わりは帝京との準々決勝、0―10の6回コールド負けだった。翌15年も1―8大敗。助言をもらった先輩たちの借りを返したナインを、福嶋監督は14年と比べて「あの時は伊藤しかいなかったが、今は総合力が高い」と評価する。もう、残る壁は1枚。戸谷は「甲子園に出場して新しい歴史をみんなとつくりたい」と言った。練習環境は悪くとも、都小山台は世代間の絆という武器で勝つ。 (武田 勇美)

 <ベンチ外「分析班」対策効果> ベンチ外のメンバーもチームを支える。6月にメンバー落ちを告げられた3年の川田は、他の部員と自主的に「分析班」を結成。受験も控える身だが「引退するまでは経験や思いを還元したい」と、相手投手や打者の特徴を選手に伝えている。前日は、帝京の同じ試合のビデオを3度も見直して攻略の糸口を探した。「足の速い選手など、注意することを教えている。試合の中で、あらゆる機会に備えられるように」。次は二松学舎大付対策に取りかかる。

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