被災後も変わらぬカープと広島の関係―「広島に勇気を届けた」という言葉が目の前で起こった日

[ 2018年7月27日 10:50 ]

20日の巨人戦の延長10回裏2死一塁、右越えに初の逆転サヨナラ2点本塁打を放った下水流昂外野手(35)を出迎える広島ナイン
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 右翼ポール際に着弾した一撃は、安易につなげたくなかった「復興」と「カープ」が、頭の中で結びついた瞬間だった。西日本豪雨の影響で、16日ぶりのマツダスタジアムでの試合となった20日の巨人戦。1点劣勢の延長10回2死一塁、広島・下水流が右越えにサヨナラ2ランを放った。

 翌日の第2戦は、菅野と30度目の対戦にして、ともに最多タイとなる11安打6得点を奪った。第3戦は0―6から5本のアーチを浴びせて3戦連続の逆転勝利。原稿内で使うことをためらっていた「広島に勇気を届けた」という言葉が、作り話ではなく、本当に目の前で起きた。

 広島県民にとって、カープとは――。「カープの試合があるとワクワクするんです」(60代女性)。「試合がない日はつまらないじゃないですか」(50代女性)。黄金期も暗黒時代も苦楽をともにしてきたカープと県民の関係性は、災害後も変わらない。カープが勝てば、広島に笑顔が増える。

 広島県は、西日本豪雨で最も深刻な被害を被った。マツダスタジアムで開催予定だった9日からの阪神3連戦の中止を決断した松田元オーナーは「復旧が進み、これ以上の災害が起こらないことが前提」とした上で「20日の段階では(被災地の)人々の気持ちが前を向き始めているのでは…と思う。その時にこそ、一緒に頑張りたい。皆さんにしっかり戦うさまを見てもらい、復興の支えになれば。それがカープの宿命だと思う」と球団が担う役割に言及した。

 傷を負った被災地も、できる人から前を向かないといけない日が来る。多くの県民にとって、明るい話題としてまず頭に思い浮かぶのがカープなのだ。

 マツダスタジアムでの試合が再開された20日の巨人戦に訪れた広島市東区在住の50代女性は「楽しいことがないと頑張れないじゃないですか。それがカープなんです」と語った。一緒に観戦する知人とは、ボランティア活動の話をしながらマツダに来た。「力仕事はできないねと…。でも、炊き出しなら私たちでもできるのかなって話してたんです」。被災者の一人として悩みながら、マツダにいる間だけは災害前と変わらずカープの勝敗に一喜一憂した。

 同県安芸郡府中町から来た60代女性は、2日間の避難生活を経験した後、ボランティア活動にも参加したという。「最初は観戦に来てもいいのかなと思いました。家の目の前の川が氾濫して…。言葉が出なかった。みんなでバケツリレーして泥を取るんだけど、終わらないんです。でも、気持ちが沈んでばっかりではダメだから、カープが頑張ってくれることがうれしい」。

 カープが勝ったところで、広島全体が元気になるかは分からない。それでも、試合中だけだとしても、事実、コイ党は笑った。しかも、赤ヘルが強いおかげで、何度も笑顔が咲く。 (記者コラム・河合 洋介)

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