熊本出身の岩貞 悔しい負け投手も故郷での夢舞台に「本当に幸せ」

[ 2018年7月15日 05:30 ]

マイナビオールスターゲーム2018第2戦   全セ1―5全パ ( 2018年7月14日    熊本・藤崎台 )

<全セ・全パ>5回終了後、バッテリーを組んだ巨人・小林(左)にねぎらわれる岩貞(撮影・坂田 高浩)
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 ホロ苦い思い出を後半戦の糧とする。阪神の岩貞祐太投手(26)が14日、地元・熊本で開催された「マイナビオールスターゲーム2018」の第2戦に全セの3番手で登板。2イニング目の5回に3安打で2点を失い、敗戦投手となった。ただ、一昨年震災に襲われた故郷での「凱旋登板」でプロ野球選手としての決意を新たにし、後半戦でフル回転する意気込みを口にした。試合は全パが5―1で連勝した。

 故郷で目いっぱい腕を振る若者を熊本城が温かく見守っていた。プロ野球選手なら誰もが憧れる夢舞台。岩貞にとってはより特別な一日だった。2回5安打2失点の結果はホロ苦くても、高校以来のリブワーク藤崎台球場でプロ野球選手としての勇姿を披露した。

 「熊本の方々の前で思い切って投げられて本当に幸せでした。高校3年以来だなと思いながら投げましたけど、点を取られて、その悔しい気持ちが9年前と変わんないなと」

 大歓声に迎えられ、4回に登板。まずは直球勝負でデスパイネを一邪飛に仕留めた。続く山川に左前打されると、変化球も解禁。この回は無失点で切り抜けた。ただ、あの夏の悔しさがよみがえったのは5回だ。先頭の松田の左中間への打球にバレンティンが緩慢な処理を見せ、一気に三塁を陥れられた(記録は二塁打と失策)。このピンチに踏ん張れず、源田、甲斐の連続適時打で2失点。県大会準決勝で熊本工に敗れた9年前の記憶が頭を駆け巡った。

 必由館高時代、プロを夢見て必死で汗を流した場所だった。当時は想像すらできなかった悲劇が襲ったのが一昨年4月14日。市街中心部に大打撃を与えた熊本地震で、熊本城公園内にある球場も外壁が崩壊した。「取り壊すような話も聞いていたので。やっぱり9年前と同じ景色だったし、震災があったけど、ここは変わらないんだなと」。1球1球に万感の思いを込めた。

 結果はともかく、家族や「復興支援活動」としてオフに軟式球を寄贈している地元の野球少年の前で投げられたことは得がたい経験となった。今後も支援活動は続ける意向で「また違った形で、本当に1番必要とされているものをやりたい」と改めて口にした。

 もちろん、阪神で活躍する姿が応援してくれる地元の方々への最大の恩返しだ。ここまで3勝4敗ながら防御率1・73。後半戦は左の先発の柱と期待される。球宴では他球団の選手からも刺激を受け、引き出しも増えた。「自分の投球でチームを勝たせる。全試合、思い切って腕を振れるように精神的にも肉体的にも準備していきたい」。故郷の夜に熱く誓った。(山添 晴治)

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