菅野「見せ場つくりたかった」超遅球も超速クイックも熊本への思いから

[ 2018年7月15日 05:30 ]

マイナビオールスターゲーム2018第2戦   全セ1―5全パ ( 2018年7月14日    熊本・リブワーク藤崎台 )

<全セ・全パ>初回2死一塁、山川にスローボールを投じる菅野(撮影・大森 寛明)
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 「マイナビオールスターゲーム2018」は14日、リブワーク藤崎台球場で第2戦が行われ、全パが5―1で全セを下し、昨年から4連勝で通算成績を84勝78敗11分けとした。16年4月に起きた熊本地震の復興支援マウンドで、巨人・菅野智之投手(28)は2回無安打無失点。スローボールの「秘策」を披露するなど、熊本のファンを喜ばせた。MVPには西武・源田壮亮内野手(25)が選ばれた。

 思いが詰まった1球だった。ポワ〜ンと緩い、山なりの軌道。菅野が速度表示も出ない、計測不能の超スローボールを投じた。

 「見せ場をつくりたかった。普段と違った対戦をお客さんが楽しみにしている。盛り上がってくれればいいなと思った」。初回2死一塁、全パの4番・山川への初球だ。宣言していた「秘策」をぶっつけ本番で投じた。結局、四球で歩かせ「あれ、難しいよ。何の意味もなく終わってしまったので悲しい」と自虐的に言ったが、この1球で菅野も、山川も、何より熊本のファンが笑顔になった。

 試合前、地元小学生の復興支援への感謝のスピーチを聞き、胸打たれた。「本来は僕たちが元気や勇気を届けないといけないんですけど」と逆に力をもらった。6年連続の出場で初めて投じた遅球は、被災地を沸かせたい一心の演出だった。さらにもう一つ。2回2死で源田への初球は一転、超クイックで投げ込んだ。「秘策は両方とも不発でした」と笑ったが、4球目で遊ゴロ。2回無安打無失点は、あの手この手のエールだった。

 一昨年は震災の影響で、同地での巨人―中日戦は中止になった。昨年初めて訪れ、ヤクルト戦で完封勝利し「熊本が大好きになった」という。いまだ修復作業中の熊本城を三塁側に望む球場左翼席は、天然記念物のクスノキが大きくせり出す。震災で球場外壁は崩れたが、木の幹はビクともしなかった。「野球をやっている姿で元気を届けるのは当たり前。募金活動などを続けていくのが使命」と、この右腕には揺るがない太い信念がある。

 外野席には地元の野球少年3300人が招待された。練習中から「たくさん声援を送ってくれた」と喜び、力に変えた。初回、先頭柳田を指さしてから、宣言通りの直球勝負。2球目の146キロで二ゴロに仕留めた。全33球中31球が速球。夢舞台で力勝負も見せた。

 「震災や今回の西日本の豪雨災害が起きてからやるだけじゃなく、普段から目を向けていくのが大事」。本来は豊富な球種を操る日本のエース。普段と違う演出こそ、被災地へのメッセージだった。 (神田 佑)

 ≪野茂以来25年ぶり4年連続先発≫菅野(巨)がオールスターで自身5度目の先発。球宴で5度以上の先発登板は史上15人目。巨人では別所6度、江川5度に次ぎ3人目だ。また、15年からは4年続けて先発。球宴で4年以上連続先発登板は

年 度  投手(所属)連続

65〜69池永(西鉄)5年

64〜67村山(阪神)4年

76〜79山田(阪急)4年

78〜81小林(阪神)4年

90〜93野茂(近鉄)4年

15〜18菅野(巨人)4年

 と野茂以来25年ぶり6人目。来年も先発すれば、池永に並ぶ歴代最多タイとなるがどうか。

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