【南大阪】興国 1年生バッテリーが救った 9回ピンチで登板

[ 2018年7月9日 08:58 ]

第100回全国高校野球選手権記念南大阪大会1回戦   興国9―5岸和田産 ( 2018年7月8日    南港中央 )

<興国・岸和田産>ピンチを切り抜けジャンプし喜ぶ(左から)興国・浅利と捕手・川口(撮影・後藤 正志)
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 第50回大会の優勝校・興国を救ったのは、途中出場の1年生バッテリーだった。3点差を追いつかれた9回はなおも2死満塁。重圧と緊張に押し潰されそうになる中、4番手右腕・浅利は岸和田産の4番・川那辺を迎えていた。三塁の守備位置からマウンドまで声をかけにきてくれた主将・荒木は、目に涙をためている。負ければ終わりの一発勝負。「僕の1球で3年生の夏を終わらせるわけにはいかない。足が震えました」。フルカウントからの6球目はファウルとなり、仕切り直しの7球目。狙い通りに外角低めギリギリいっぱいへ速球を投げ込むと、球審の右手が上がった。

 「直前のバッターを歩かせて切り替えられました。最後は一番自信があるアウトコース低めに投げました」

 5―5の9回2死一、二塁、カウント2ボールとなったところで登板を告げられた。2球連続ボールで四球(記録は3番手・宇山)となったが、満塁となったことで気持ちをリセットさせた。続く4番を見逃し三振に退けると、延長に入ってからは本領を発揮。延長11回までの2回1/3を無安打4奪三振という完璧リリーフで、勝利をたぐり寄せた。

 部員125人という激しい競争を勝ち抜き、背番号11を手にした。大阪の堀江中では軟式野球部に所属し、大阪市中学生軟式野球オールスター戦にも出場。1メートル85、70キロとまだまだ細身だが、角度あるストレートを徹底して低めに投げ込む。田中英樹監督は「8割方低めに投げられ、変化球でストライクも取れる」と評価。最速は130キロ前半でも、潜在能力の高さは折り紙付きだ。

 1年生捕手・川口も、浅利に負けない輝きを放った。延長10回の守りで正捕手・橋本星が負傷退場。打撃でも5番を務める攻守の要を欠く絶体絶命の局面だったが、どこまでも冷静だった。

 「試合前に主将の荒木さんから“自分を信じることが大事”と言われていたことを思い出しながら、グラウンドへ行きました」

 交代直後の打者を遊ゴロ併殺打に仕留めると、1点を勝ち越して迎えた11回2死満塁の第1打席。カウント1―2と追い込まれたが、外寄りの4球目に食らいつき、ダメ押しとなる右前2点打を放った。

 田中英樹監督は1年生コンビに「腹をくくって浅利を出しました。ただ、四球は心配していなかったし、初めての夏でよく投げてくれた。川口は元気があって、キャッチング、リードの良さがある。持ち味を出してくれた」と及第点。続けて「1回戦負けもあり得るという緊張感を持って臨んだ試合でした。9回に逃げ切らないといけませんが、勝ちきることも大事。勝ちきってこそ、次に進める」と先を見据えた。

 丸山―丸目のバッテリーで全国制覇を果たしてから半世紀。混戦の南大阪大会にあって、古豪復活への期待は高まっている。「50年前と同じユニホームで戦っていますし、母校に誇りを持って戦っていきたいです」。背番号12の川口は1年生らしからぬ、落ち着いた雰囲気で言葉をつないだ。昨秋4強のチームに加わった頼れる新戦力。激闘を制した粘り強さも手に、聖地への歩を進めていく。

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2018年7月9日のニュース