高校野球で町と学校盛り上げる 埼玉県小鹿野高野球部の挑戦

[ 2018年6月21日 15:08 ]

逸見主将(左)に打撃指導する石山外部コーチ(中)
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 【伊藤幸男の一期一会】少子高齢化による町立高校の生徒数減少に、高校野球の団結力で歯止めをかけたい。

 埼玉県秩父郡の山あいにある県立小鹿野ナインに再び勝負の夏がやってきた。過疎化が進む町内唯一の高校とあり全校生徒は約220人ながら野球部員は28人。「町おこし」の一環として立て直しに7年間取り組んできた成果が、野球人口が減り続ける昨今とは真逆の数字を弾き出した。

 昨秋から指導者に就任し「積善の功 幸あり〜 愛される野球部〜」をスローガンとした丹羽俊亮監督(25)は「町の応援は本当にありがたい。協力なくしては成り立たない」と感謝している。

 12年度から始めた「山村留学制度」が風穴を開けた。通学時間が2時間以上かかっても野球部への入部希望者なら、近くの「須崎旅館」や国民宿舎「両神荘」に住み込み通学を可能にした制度だ。

 当初は多感な年頃の高校生を受け入れることに不安はあった。だが定員割れの危機が迫る同校存続へ須崎旅館の女将・須崎安子さん(80)は「地元校を応援するんだから」と即決。今年も計14人の山村留学生が町民に礼儀正しく挨拶する姿に「スポーツって本当にいいな」と若女将の真紀子さん(42)は感心していた。丹羽監督も練習後に留学生の生活ぶりを見回るなど支援体制は固まりつつある。

 1回戦負けの常連校だった野球部強化にも取り組んだ。早大、社会人プリンスホテルの元監督で巨人軍編成本部長補佐まで務めた石山建一氏(76)を外部コーチに招聘。当初は雑草だらけのグラウンドを部員と整地しながら基礎を教え込んだ。

 「まずは野球を好きにならないと。技術指導はそれから。相手の取りやすいコースに投げるキャッチボールから仲間を思い、チームワークが生まれる」。石山氏の指導に生徒の意識改革が芽生えた。

 部員増と並行し強化も着々と進んだ。16年秋季埼玉県大会ではベスト16に進出。センバツ21世紀枠推薦が少しだけ見えた。

 とはいえ勝ち進むほどレベルは上がっていく。中学時代から4番&エースが集う名門私立校と互角に戦うのは厳しいと周囲も理解していた。ただ「高校野球で町を盛り上げ、魅力ある高校にしたい」目的だけは失わない。試合中、保護者や地元民がナインを応援しながら一つになることが求めてきた光景だ。

 20日の北埼玉県組み合わせ抽選の結果、初戦は7月8日、越ケ谷と対戦。逸見真央主将(3年)は「ボクらは守れないと勝てない。最少失点に抑えたい」と意気込めば、DeNA・筒香にあこがれる4番・松澤駿樹(2年)は「打球の飛距離が伸びてきた」と目を輝かせた。

 人口1万2千人、小鹿野町民の熱い声援を背に部員がグラウンドへ飛び出す。(専門委員)

 ◆伊藤 幸男 1959年6月8日生まれ。84年スポニチ入社。アマ野球、巨人担当。北海道総局勤務を経て現在に至る。

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