巨人 鍬原 三度目の正直でプロ初勝利「次はお母さんの前で勝てるように」

[ 2018年6月15日 05:30 ]

交流戦   巨人6―4ソフトバンク ( 2018年6月14日    ヤフオクD )

プロ初勝利を挙げた巨人・鍬原(撮影・中村 達也)
Photo By スポニチ

 三度目の正直だ。巨人のドラフト1位・鍬原拓也投手(22)が14日のソフトバンク戦に先発し、5回2/3を4安打4失点でプロ初勝利を挙げた。2発を浴びたものの、7奪三振の力投。3度目の先発で待望の白星をつかんだ。中大の先輩にあたる阿部慎之助内野手(39)が2回に5号ソロ、沢村拓一投手(30)も好救援と後輩を援護し、「中大デー」となった。

 極度の緊張で勘違いしていた。鍬原は、勝ち投手の権利があることを9回2死まで知らなかった。

 「6回に逆転してもらったので、その裏を投げ切らないと勝ち投手になれないと思っていた」

 1点リードの6回2死で降板。悔しい思いでベンチに戻り、引き継いだ中大の先輩・沢村から「絶対勝たせてやる」と言われても「意味が分からなかった」と言う。試合終了直前に中井から説明され、初めて初勝利を理解。直後、高橋監督に肩を抱かれてフラッシュを浴びた。

 2被弾で5回2/34失点だったが、持ち味は発揮した。シンカーは全22球中、左打者に20球。スプリットは全7球を右打者にと、使い分けを徹底した。2回は柳田をシンカーで、続くデスパイネをスプリットで連続空振り三振。過去2回の登板は、四球の後に失点して勝てなかった。4回の連続四球の後「強気に投げていこうと思った」と連続空振り三振で切り抜け、同じ過ちを繰り返さなかった。直球の最速は149キロで7三振を奪い、高橋監督も「素晴らしい投球。一歩ずつ歩んでいってほしい」と期待した。

 帽子を振り落とすほど荒々しい投球。中大時代に投球練習だけでなく、打撃練習で天性のバネに磨きをかけた。DH制のある東都大学リーグで打席に立つことはなかったが、積極的に打撃練習に取り組んだ。下半身をしっかり使わないとボールが飛ばないことは、投球に通じる。中大の清水達也監督が「ロングティーをやると野手より飛ばしていた。打者としても活躍できると思った」と言うほど。野手としてドラフト指名を検討する球団もあったほど、その野球センスは優れている。

 中大の先輩では阿部の援護、沢村の好救援があり「本当に先輩方が勝たせてくれた勝利だと思う」と感謝した。経済的に苦しい中で、女手一つで育ててくれた母・佐代子さん(49)はテレビで観戦。過去2度の登板は球場で見守られたが勝利を届けられず「次はお母さんの前で勝てるように頑張ります」と約束した。大切そうに右手で握ったウイニングボールを届ける。

 「交流戦後もローテーションで使ってもらえるように、持ち味を出したい」。その言葉は力強く、頼もしかった。 (神田 佑)

続きを表示

この記事のフォト

2018年6月15日のニュース